社説

社説[「慰霊の季節」に]二重苦どう克服するか

2021年5月31日 07:07

 沖縄戦における住民の犠牲は、他の月に比べ、6月が突出して多い。

 首里から撤退してきた日本軍と、保護もされずに戦場をさまよう避難民や地元住民が6月、摩文仁一帯で混在状態に陥り、米軍の猛攻撃を受けた。

 例年、この時期は、「慰霊の日」をピークに、県内各地で慰霊祭や平和を考える行事が続く。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は、軒並み中止や縮小に追い込まれた。今年も例年通りの開催ができない厳しい状況に立たされている。

 県は昨年同様、沖縄全戦没者追悼式を縮小する。規模を縮小して開催する自治体が多い中で、粟国村は2年連続の中止を決めた。

 県遺族連合会と日本遺族会も昨年に続き「平和祈願慰霊大行進」を取りやめる。

 その一方、「集団自決」(強制集団死)で多くの犠牲者を出した座間味村では3月26日に、読谷村波平のチビチリガマでは4月3日に、それぞれ規模を縮小して慰霊祭が行われた。

 悲劇の場を平和発信の場にしていきたいとの思いから、

戦後世代の遺族や関係者が中心になって、コロナ禍の慰霊祭を実現させたのである。

 沖縄戦から76年。戦後世代は今や人口の8割以上を占める。高齢化によって体験者が語る機会は急速に減り、沖縄戦は今や「記憶」から「歴史」に変わりつつある。

 その上に、コロナ禍が追い打ちをかけている現状は、決して楽観視できない。

■    ■

 ひめゆり平和祈念資料館は4月、「戦争からさらに遠くなった世代へ」をテーマにリニューアル・オープンした。

 若い世代に伝わるよう展示内容を変更しただけでなく、資料館の運営も体験世代から非体験世代に替わった。

 バトンタッチがスムーズに実現できたにもかかわらず、資料館は、開館以来の危機に見舞われている。

 新型コロナの感染拡大で修学旅行のキャンセルなどが相次ぎ、入館者が激減しているのである。全国の平和ミュージアムが同じ二重苦を抱え、苦しんでいる。

 一施設の努力にまかせるのではなく、沖縄ならではの連携や協力体制が構築できないだろうか。

 戦争から遠く離れた「体験者のいない時代」に、戦争のリアリティーをどのような方法で確保し、沖縄戦の実相を共有化していくか。これも避けて通れない課題である。

■    ■

 戦争の記憶をどのように継承するかという問題には、もう一つの側面がある。

 忘却という一面だ。記憶の継承は、別の出来事を忘却することにつながりやすい。

 「平和の礎」には日中戦争で亡くなった沖縄出身者の名前も刻まれているが、日中戦争を考える機会は少なく、加害者としての側面が忘れられつつある。

 沖縄戦体験が殉国美談として語られ、犠牲が美化されることがある。戦没者の凄絶(せいぜつ)な体験や苦悩、懐疑が切り捨てられるという意味では、これも忘却と言うべきだろう。

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