社説

社説[生理の貧困]女性視点の欠如 根底に

2021年6月7日 06:47

 新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮する人が増える中、「見える化」された問題である。これまで公的支援がほとんどなかったのは、女性のニーズに対応できていない政策決定のひずみともいえる。

 民間団体が3月に発表した調査をきっかけに、ナプキンなどの生理用品を買えない「生理の貧困」がクローズアップされた。

 高校生や大学生らを対象にしたオンラインアンケートで、5人に1人が「過去1年間に金銭的理由により生理用品の購入に苦労した」と答えている。

 さらに約4割が節約のため交換する頻度を減らし、約3割が生理用品でないものを使ったと回答している。

 女性の健康や尊厳に関わる問題だというのに、タブー視され、実態がよく知られていなかった。それだけに、アンケートの数字が切実さを物語る。

 「生理の貧困」は、母親に頼れないなどネグレクト(育児放棄)といった家庭環境も複雑に絡んでいる。 

 ひと月千円ほどとはいえ、毎月のこととなると負担感は増す。食料品などに比べ、後回しにされがちな出費である。家計の逼迫(ひっぱく)を知り親に言い出せない学生もいるのではないか。

 生理用品の使い回しや未使用による健康への影響が心配だ。 

 生理期間中に学校を休んだり、重要なイベントへの参加を諦めたりするなど「機会の損失」も懸念される。

■    ■

 住民に近い自治体を中心に支援が広がりつつある。

 内閣府の5月の調査によると、全国で少なくとも255の自治体が支援策を講じている。県内で取り組むのは沖縄市や北谷町など5自治体。事業費の予算化のほか、防災備蓄の利用、寄付の活用でナプキンを提供する。取り組みで目立ったのは公共施設での配布や配置だ。

 無料とはいえ申し出るのをためらう人も少なくない。必要な人の手に確実に渡るよう、学校の女子トイレに置いて利用してもらうなどの工夫を求めたい。

 政府も自治体への交付金の使途に生理用品の無料配布を加えるなど支援に乗り出している。

 昨年、スコットランド議会は生理用品を無償で提供する法案を可決した。フランス政府も大学生への無料配布を決めている。

 継続的支援につなげるためには、公的責任による取り組みの強化が必要だ。

■    ■

 東日本大震災時、避難所で生理用品の不足が叫ばれたことを思い出す。手渡すのが男性のため頼めなかったり、1人に1枚しか配布されないなど配慮に欠けるケースが相次いだ。

 その後、災害対応や避難所運営に女性の視点を取り入れる動きが生まれた。

 「生理の貧困」も意思決定の場に女性が少なく、その声が政策に反映されにくいことが根底にある。

 コロナ禍だからではなく、平時からの対策の必要性を広く社会で共有したい。

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