宮古島市内の陸上自衛隊「保良訓練場」への弾薬の搬入が始まった。

 大型輸送ヘリで航空自衛隊宮古島分屯基地へ運び込まれ、陸路で保良訓練場へ移送された。

 近く搬入があることは伝えられていたものの、座喜味一幸市長へ連絡が入ったのは当日の搬入直前。市長は日時やルートの公表を求めていたが「安全確保の観点」から示されることはなかった。

 搬入に抗議し、トラックの進入を防ごうと入り口前に待ち構えた市民たちは強制排除された。夜、怒号や叫び声が上がる中で弾薬が運び込まれたのである。

 市が把握して当然の情報が直前まで秘密にされ、住民の理解を得るための丁寧な説明もなかった。そのようなやり方は不信感を高めるだけである。

 保良訓練場は今年4月、利用が始まった。場内には弾薬庫が整備され、中距離多目的誘導弾や迫撃砲弾などが保管される計画だ。

 隣接する保良と七又の集落は建設に反対する決議を総会で可決し堅持している。「集落まであまりに近く極めて危険」などとする住民の不安を軽視してはならない。

 しかし、沖縄防衛局が開いた住民見学会では、弾薬庫の安全性に関する質問に「シミュレーションしていない」との理由で明確な説明はなかった。火薬の貯蔵量なども「明らかにできない」と回答を避けたという。

 これでは安全だと感じることはできない。もし爆発があれば住民の生命や財産に被害が及ぶ恐れがあるというのに住民の不安に向き合おうとしないのは不誠実だ。

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 宮古島市への弾薬搬入を巡っては、陸自が宮古島駐屯地を開設した2019年にも住民の不信を招く事態が起きた。

 駐屯地内の「警備に必要な小銃弾・発煙筒などの保管庫」と説明していた施設が、実際は弾薬庫で、中距離多目的誘導弾などが保管されていたことが発覚したのだ。

 当時の岩屋毅防衛相が謝罪し、誘導弾などが島外へ搬出された経緯がある。

 防衛省は今後、保良訓練場に地対空・地対艦誘導弾などのミサイルを運び込む見通しだ。海上輸送を検討しているという。安全面への対応を含め地元への説明責任を十分果たしてもらいたい。

 座喜味市長は自衛隊配備を容認する立場だが、毅(き)然(ぜん)とした態度で説明を求めてほしい。

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 防衛省は南西地域の防衛体制強化のため、部隊配備を着々と進めている。中国の動きをにらんで基地機能は強化の一途をたどる。

 ただ、宮古島市では駐屯地の用地取得を巡る贈収賄事件で前市長が逮捕されるなど、防衛政策のひずみも露呈した。

 台湾を巡って米中が衝突する事態になれば沖縄の米軍基地がターゲットにされ、自衛隊がほぼ自動的に巻き込まれる恐れが高い。沖縄の「軍事要(よう)塞(さい)化」ではなく緊張緩和に向けた関係改善にさらに力を注ぐべきだ。