社説

社説[辺野古訴訟 最高裁判決を受けて]

2016年12月21日 09:30

 「辺野古違法確認訴訟」の最高裁判決が20日言い渡され、県の上告が退けられた。米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る問題は、この20年で最大かつ重大な局面を迎える。社説特集を掲載します。

日米政府が米軍普天間飛行場の移設先としている名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸

[県敗訴の構図]地方自治の精神ないがしろ

 「辺野古違法確認訴訟」で県側敗訴が確定した。福岡高裁那覇支部の判決を最高裁がほぼ追認した。

 戦後70年余りも、米軍基地から派生する事件・事故の被害にさらされ続けている歴史を一顧だにしないばかりか、今後も基地負担を強いることを意味する中身だ。地方自治の否定もあからさまである。最高裁も沖縄の声を封じ込めた。

■     ■

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、国が県を訴えた「辺野古違法確認訴訟」で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は20日、翁長雄志知事の「承認取り消しは違法」と指摘し、県側の上告を棄却した。4裁判官の一致した結論だった。

 翁長知事は、埋め立て承認の取り消し処分を取り消す手続きに入る。

 だが、来年3月に期限が切れる埋め立てに必要な海底の岩礁破砕許可や、埋め立て区域内から区域外へ移植するサンゴの採捕許可、工事の設計・工法の変更に伴う審査など知事権限を最大限行使して新基地建設を阻止する考えだ。

 一方、国は今年3月、県と和解が成立して以来、工事がストップしていることから再開を急ぐ方針だ。菅義偉官房長官は「日本は法治国家である。確定判決に従い、県と協力して移設工事を進めていく」と語る。徹底抗戦の構えの翁長知事をけん制するが、対立が続くことは間違いない。

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 最高裁は判決で、辺野古新基地の面積が普天間飛行場と比較して相当程度縮小されることや、環境保全対策が取られているなどとして、前知事の判断に「不合理な点はない」と認定した。高裁判決を踏襲するものだ。だが面積を減らせば基地の負担軽減につながるわけではない。辺野古新基地には2本の滑走路が設計され、普天間にはない強襲揚陸艦が接岸できる岸壁や弾薬搭載エリアが新設される。耐用年数200年といわれ、沖縄は半永久的に基地の島から逃れられない。

 県は辺野古新基地の建設を強行することは憲法92条の地方自治の本旨(沖縄県の自治権)を侵害し憲法違反として上告していた。最高裁は今月12日付で棄却している。国と地方公共団体との関係が「上下・主従」から「対等・協力」に大転換した1999年の地方自治法改正後、初めての訴訟である。最高裁が審理せずに棄却したのは改正の精神をないがしろにしていると言わざるを得ない。

 米軍基地は日米地位協定によって米軍の排他的管理権が認められ、国内法が及ばない。

 沖縄では米軍絡みの事件・事故では「憲法・国内法」の法体系が「安保・地位協定」によって大きな制約を受けているのが現実なのである。基地内の事故や環境調査もままならず、自治権が侵害されるケースは枚挙にいとまがない。

 米軍絡みでは民間地も同じだ。オスプレイが名護市安部に墜落した事故で、住民の生命や生活、人権を守る責務を負わされている名護市のトップである稲嶺進市長が現場に近づくことができず、県が水質検査をすることができたのは6日後である。2004年の普天間所属の大型ヘリコプターが沖縄国際大に墜落、炎上した事故で警察や行政が米軍が張り巡らせた規制線から排除されたことと何も変わっていない。

■     ■

 最高裁が審理するのは憲法違反や法令・判例違反に限られることから、事実認定としては高裁判決が確定する。

 高裁判決は「普天間の被害を除去するには辺野古に新施設を建設する以外にない」としたり、北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」をことさら取り上げ、射程外となるのはわが国では沖縄などごく一部などと国の主張をなぞるように「地理的優位性」を強調して批判を浴びた。最高裁判決はこれらに触れなかった。

 最高裁が弁論を開かず判決を言い渡すことを決めたからである。とても納得できるものではない。

 

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