憲法改正手続きを定める改正国民投票法が、多くの課題を積み残したまま、11日の参院本会議で可決、成立した。

 最も大きな問題は、テレビ・ラジオのスポットCMやインターネット広告がほぼ野放しであることだ。

 投票日の14日前から投票運動のためのCMは禁止されるが、それ以外の意見広告やネット広告には制限がない現行法の規定は手つかずで残った。2007年の法制定当時は広告費全体の1割足らずだったネット広告は19年初めてテレビ広告を上回り、影響力を増し続けている。無規制のままでは資金力で投票結果が左右されかねない。

 最低投票率の規定がなく、国民全体の意思が反映されない可能性がある状態もそのままだ。CM規制、最低投票率ともに、制定時の付帯決議で「施行までに必要な検討を加える」とされていたが、議論は進んでいない。

 改憲案が一括して国民投票に付される余地があるのも批判が強い。9条と環境権創設など複数の改定案がまとめて国民投票に付されれば、国民は個別に賛否を表明できず、棄権したり不本意な投票を強いられたりする恐れがある。

 今回の改正国民投票法は、駅や商業施設でも投票できるようにする「共通投票所」導入など、公選法同様の利便性向上策を設ける形式的な内容だ。先月の与野党合意を基に施行後3年をめどにCMやネット広告規制について必要な措置を講じるとの付則が追加されたが、これら問題点への具体的対処は先送りされたままである。

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 そもそも、新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、成立を急ぐ必要があったかも疑問だ。

 自民党内にはコロナ禍で緊急事態条項新設の必要性が高まったとの声がある。加藤勝信官房長官は11日の記者会見で、緊急事態条項への関心は高まっており、改正国民投票法成立は改憲論議を進める「絶好の契機」と述べた。

 ただ、戦争や大規模災害における緊急事態条項と感染症対策を同列に並べるのは無理がある。秋までにある衆院選に向け改憲派にアピールしたかったようだが、コロナ禍に便乗するような発言は国民感情を逆なでするだけだ。

 一方、3年間採決に反対し続けた立憲民主党が一転、賛成に回ったのは野党共闘への影響に配慮したためという。自民も立民も目先の選挙を意識しての行動ということだ。問題を多く残したまま改正法を成立させた説明責任は、与野党ともに問われる。

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 改正により、改憲派は「改憲発議への環境が整った」と主張するが、本当だろうか。

 参院憲法審では、改正後の改憲発議が可能かについて、是非の見解が与党と立民などで分かれたまま可決された。常識的にいえば、国民投票の公平性が担保されない今のままでは改憲の正当性に疑問が生じかねない。

 今、与野党がなすべきは、付則が定めるように、重大な欠陥と言われるCM規制などの問題について3年以内に解決し、国民投票の公平性と正当性を担保することだ。