2019年7月の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反(買収、事前運動)に問われた元法相の河井克行被告に、東京地裁は懲役3年の実刑判決を言い渡した。

 判決は、元法相が妻の案里氏の当選を目指し、地元議員ら100人に計約2870万円を配ったと認定した。

 「極めて大規模な選挙買収」であり、判決が「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行」と断じたのは、まさにその通りだ。

 ただ判決では解明されていない問題がある。案里氏陣営に自民党本部が投入した1億5千万円の資金のことだ。

 買収の原資となった疑念が持たれているが、判決は原資について言及していない。元法相は、買収原資は「手持ち資金だった」と釈明しているが、うのみにはできない。

 現に公判では、検察側から「自民党本部からの入金が(現金供与の)原資となった」とする元会計担当者の供述調書が明らかにされている。判決で決して幕引きにしてはならない。

 そもそもなぜ党本部から案里氏陣営に、同じ選挙区で競った現職の10倍もの資金が支給されたのか。誰がそれを決定したのか。

 巨額資金のうち1億2千万円は税金が元手の政党交付金であることが分かっている。自民党には経緯などを説明する責務がある。

 党本部はこれまで、関連資料が捜査当局に押収されたとして説明を避けてきた。返却され次第、資料を示し納得できる説明をしてもらいたい。

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 選挙戦では当時官房長官だった菅義偉首相が複数回応援に入り、安倍晋三前首相の秘書も広島県内を回った。党本部が案里氏陣営を強力にてこ入れしていたのは明らかだ。

 だが、これまでの党幹部らの発言をみると、自身の関与を否定するばかりか責任をなすりつけ合うようなやりとりがあった。これでは政治への不信感は増幅するばかりだ。

 現金を受け取った地元議員らは刑事処分がされていないのも、ふに落ちない。

 「受領を拒む相手に何度も迫ったり、無理やり受け取らせたりした」と判決が指摘するように、元法相の犯行が悪質なのは明らかだが、公選法には買収された側も罰する規定がある。

 議員や首長のうち一部は辞職したが、大半は今も政治活動を続けている。一切おとがめなしでは処罰の公平性が損なわれる。何らかのけじめは必要だ。

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 「政治とカネ」を巡っては選挙区の有権者に香典などを提供した菅原一秀前経済産業相の公選法違反事件など、この1年間で大臣経験者3人を含む5人が立件された。「桜を見る会」の安倍前首相の疑惑も払(ふっ)拭(しょく)されていない。共通するのは説明責任を果たしていないことだ。

 自民党の二階俊博幹事長は元法相の判決を受け「党全体の規律徹底と信頼回復に努める」とのコメントを発表したが回復は容易ではない。問題をうやむやにせず真相解明に尽くすことが、最低限果たすべき責任である。