きょう6月23日は沖縄戦で旧日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日から76年にあたる「慰霊の日」。1965年に制定されており、この日は沖縄では役所や学校は休みになる。各地では追悼式が開かれ、平和への祈りに包まれる一日だ。一方で、沖縄タイムスとヤフーとの共同アンケートでは、全国からの回答者2000人のうち、75.5%にあたる1509人が慰霊の日を「知らなかった」と回答した。慰霊の日を元々知っていたかどうかは人から直接話を聞いたり、学校教育で沖縄戦について学んだりした経験が関係していることがアンケート結果から読み取れた。(文:比嘉桃乃、データ分析:宮城博一)

アンケートでは75.5%にあたる1509人が慰霊の日を「知らなかった」と回答。「知っていた」のは24.6%(491人)にとどまった。
「沖縄戦」について聞いたことがある人に誰から聞いたか、または何で知ったか(複数選択可)を聞いた質問では、全体の60.8%にあたる1216人が「テレビや新聞のニュース」と回答。「テレビドラマや映画」が43.3%(866人)、「沖縄戦について聞いたり見たりしたことがない」が18.3%(365人)と続いた。
沖縄戦を学校で学んだ記憶については全体の28.2%(564人)が「学んだ記憶がない」と回答。「学んだかどうか分からない」が24.7%(494人)、「中学校で学んだ」が19.9%(398人)だった。
沖縄戦を学校で学んだ記憶があるという人にはどのように学んだかを聞いた(複数選択可)。「授業で学んだ」が最も多く71.3%(841人)、「沖縄の資料館や戦跡で学んだ」が16.8%(198人)、「沖縄戦の体験者から学んだ」が9.7%(115人)だった。
◆人から直接話を聞いたことがある人ほど「知っていた」
今回のアンケートでは沖縄戦の体験者や、家族や親族、友人・知人から聞いたことがある人ほど、慰霊の日を「知っていた」と回答した人が多かった。また、沖縄戦関連の書籍で沖縄戦について知ったという人もいた。テレビや新聞のニュース、テレビドラマや映画で沖縄戦に触れていても、「慰霊の日」の認知度との関連性は低かった。また「知らなかった」人の中には「沖縄戦について聞いたり見たりしたことがない」(352人)といった回答も目立った。
アンケート結果からは慰霊の日を知っているかどうかは学んだ記憶も大きく関係していることが読み取れた。慰霊の日を「知っていた」と答えた人のうち、69%にあたる339人が小中高や大学・専門学校などで学んだと回答。沖縄戦について聞いたり学んだりした内容については多くの人が「沖縄で唯一の地上戦があり、住民が巻き込まれた」と回答した。「集団自決(強制集団死)があった」と回答する人も多かった。また、「知らなかった」と回答した人のうち「学んだ記憶がない」「学んだかどうか分からない」を選択した人は6割を占めた。
◆実際に施設や戦跡を訪れたことがあるかどうかも関係?
実際に沖縄を訪れ、沖縄戦に関連する施設や戦跡を訪れたことがある人のうち、慰霊の日を「知っていた」と回答したのは204人、「知らなかった」は358人だった。どこを訪れたかの問い(自由記述)には「ひめゆりの塔」を挙げた人が目立った。
施設や戦跡を訪れたことがないと回答した1438人のうち、慰霊の日を「知っていた」と回答したのは287人、「知らなかった」と回答したのは1151人で差が大きく開いた。
◆報道のあり方にも課題 沖縄から事実の発信を
沖縄戦の継承について研究する沖縄大学客員教授の新城俊昭さんの話
アンケートに回答した人のうち、75・5%が慰霊の日を「知らなかった」と回答したことは、残念というほかない。全国的には終戦記念日が中心となるため、沖縄戦に関する報道も沖縄と全国では差がある。全国の人たちが沖縄戦のことを目にしたり、耳にしたりする機会は少ないため、「知らなかった」という数字が大きくなったのだろう。報道のあり方にも問題があると思う。
さらに、「学んだ記憶がない」「学んだかどうか分からない」と回答した人も目立った。教科書にもよるが、沖縄戦のことは数行しか扱われていないことが多い。そのため修学旅行で沖縄に足を運ばない限りなかなか沖縄戦を知るきっかけはないのだろう。
そんな中、「修学旅行」で沖縄を訪れてもらうことは記憶の継承という意味でも大きなポイントだ。ただ、コロナ禍で修学旅行生も減っており、県外の学生に沖縄戦を知ってもらう機会も少なくなっている。状況が落ち着いたら再び修学旅行の呼び込みに尽力していく必要がある。
沖縄戦を知るには、沖縄がどのように日本に取り込まれていったのかまでさかのぼって学んでいく必要がある。沖縄から事実関係を発信し続けるという沖縄側の努力も必要だ。まずは知ってもらうことが大きな一歩だ。
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沖縄タイムスは今回、ヤフーとの共同調査を実施。6月7~8日、10代以上のヤフーユーザーを対象にインターネット上で回答を募り、全18問で全国2000人から回答を得た。回答したのは50代以上が最も多く、35.2%、次いで40代で34.3%、30代で20.4%だった。質問では「慰霊の日」を知っているかどうかや、「沖縄戦」について聞いたことがあるかなど自由記述も交えながら18項目について答えてもらった。