真相究明の手掛かりになる重要な資料だ。しかし、問題の全容解明はまだ道半ばで、徹底した調査が必要だ。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんで、自殺に追い込まれた近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんが残した「赤木ファイル」が妻の雅子さんに開示された。

 俊夫さんが改ざんの指示内容などを時系列でまとめた備忘記録や、財務省と近畿財務局の間で交わされたメールなど518ページに及ぶ。

 昨年3月、雅子さんが国に損害賠償を求めた裁判で開示を求めていたものだ。国はこれまでファイルの存否さえ明らかにしていなかった。大阪地裁の要請を受け1年超を経てやっと開示するに至った。

 赤木ファイルには、開示請求に備え「削除した方が良いと思われる箇所がある」と、決裁文書の修正を求めたメールがあった。

 当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏から国会答弁を踏まえた上で調書を作成するよう「直接指示があった」と明記した職員発信のメールもあった。

 同省の2018年の報告書は佐川氏が「方向性を決定付けた」としたが、改ざんの「指示」については明記しておらず、両者には齟齬(そご)がある。

 そもそも森友学園を巡る文書改ざんは、当時の安倍晋三首相が「私や妻、事務所が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と発言した後に起きた。官邸の関与はなかったのか。核心部分は明らかになっておらず、疑念は膨らむ。

■    ■

 赤木ファイルには「既に意思決定した調書を修正することに疑問が残る」と強く抗議するメールがあった。「ぼくの契約相手は国民です」が口ぐせだったという俊夫さんの公務員としての矜持(きょうじ)が伝わる。

 雅子さんは5月、この問題を多くの人に知ってもらおうと「全国行脚」を始めた。出発地に沖縄を選んだ。

 初めての沖縄だった。遺骨収集現場を訪れ、戦後76年たった今も土砂に埋もれたままの戦没者の骨を手に取った。新基地建設が進む名護市辺野古では、体を張って基地に反対するお年寄りから、過酷な戦争体験を聞いた。

 雅子さんは「(遺骨になった戦没者は)亡くなって、なかったことにされてきた方たちだ」「夫も改ざんさせられた後、『戦争と同じなんや』ともらしていた」という。沖縄の問題と俊夫さんの姿が重なったのだろう。

■    ■

 赤木ファイルは国会にも提出された。野党は「(公文書改ざんという)大胆な指示を佐川理財局長ができたのか」と疑問視し、当時の官邸とのやりとりを明らかにするよう要求している。

 雅子さんは会見で、第三者による再調査を求めた。

 財務省が行った調査は身内によるもので、赤木ファイルで明らかになった事実との食い違いも見られる。

 全容解明には、第三者委員会の設置が必要だ。うやむやな幕引きでは国民は納得しない。国は徹底的に事実関係を調べ、真相を明らかにするべきだ。