本島地方で6月29日未明、積乱雲が線状に連なって激しい雨をもたらす「線状降水帯」が発生し、気象庁は「顕著な大雨に関する気象情報」を発表した。17日から全国的に運用が始まったばかりで、発表されたのは今回が初めて。各地で大雨や洪水の警報が出され、粟国村では24時間雨量306・5ミリを観測した。

 那覇や沖縄など8市町が、大雨・洪水警戒レベル(5段階)で4に当たる「避難指示」を出した。避難対象は約17万8千人に上り、県内25カ所に避難所が設置された。土砂崩れや住宅への浸水などが相次いだものの、人身被害の報告がなかったのは幸いだ。

 ただ、近年の豪雨災害の一因とされる線状降水帯が発生し、自治体からの避難指示が出ても、実際に避難した人は那覇や名護などで9世帯16人だった。気象庁が、豪雨災害への危機感を伝える狙いで始めた「情報」の発表が、どれほどの効果を発揮しただろうか。

 大雨・洪水警戒のレベル4に並立し、自治体がこれまで出していた「避難勧告」と「避難指示」のうち、「勧告」が廃止された。一本化された「指示」が出たら、対象の全員が危険な場所から離れるよう呼び掛けている。

 その指針からすると、今回の避難人数は少ないように映る。ただ、避難所へ行くことだけが「避難」ではない。親戚・知人宅へ身を寄せることや、安全なホテル・旅館へ行くこと、自宅内での安全確保も含まれる。

 一人ひとりが気象状況を踏まえ、警報・避難情報を把握し、臨機応変に身の安全を守る意識を高めたい。

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 今回の「顕著な大雨に関する気象情報」の発表は午前2時49分だった。多くが寝静まる真夜中の発表だと、瞬時に把握することが難しい。前もって予測・発表することはできなかったのか。

 線状降水帯を構成する一つ一つの積乱雲は小さく、予測は困難とされてきた。

 気象庁は来年の梅雨期から、降水帯の可能性を半日前に予測することを目標に、観測精度の向上を目指す。人工知能(AI)を活用し、気温や湿度、風の動きなど、複数パターンを予測するという。

 観測技術を磨くと同時に、今回の初公表が人々にどう伝わり、具体的な避難行動に結び付いたのかを分析する必要がある。運用開始から間もない時期だけに、認知度不足があるのであれば、それも含めて、運用の在り方を検証すべきだ。

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 災害への注意喚起をする上で、降水帯に注目が集まるほど、他の防災情報との関係性などについて、受け取り手が混乱する懸念もある。従来の大雨洪水警報・注意報のほか、自治体が出す避難準備・指示、都道府県と気象台が共同発表する土砂災害警戒情報など、指標が乱立ぎみと言えなくもない。

 住民の適切な避難行動や災害の未然防止にどうつなげていくか。刻一刻と変化する気象状況を分かりやすく、確実に伝え、人々が的確に判断できる素地を整えるべきだ。