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「選挙の新人が371カ所も回るのは大変」 IT企業に勤める26歳が、30分でポスター掲示板マップを作った思い

2021年7月2日 13:00

 7月11日に投開票される那覇市議選。立候補者のポスターを貼る掲示板は371カ所にも上る。張り出す作業は、場所の確認など含め膨大な作業になる。沖縄県内のIT企業に勤めながら、個人としてシビックテック活動を行なっている大田小波さん(26)が、市内各地にある掲示版へ簡単にたどり着けるようネット上でマップを公開した。きっかけと想いを聞いた。(デジタル部・儀武勝希)

シビックテック(Civic Tech)とは

 市民(=シビック)とIT(=テクノロジー)を掛け合わせた造語。市民自らがITを活用し生活を便利にしたり、行政サービスの問題や、社会課題の解決に取り組む活動をいう。

 元々コンピューター関係の仕事に就きたかったという大田さん。高校卒業後は、海外留学を見据え県内の専門学校で英語を学んだ。その後、海外観光客向けにWi-Fi端末をレンタルする仕事に従事しながらプログラミングスクールに通い、ウェブに関する技術を習得した。現在はスマホアプリやウェブサイトを制作する会社に勤めている。

大田小波さん(本人提供)

 シビックテックとの関わりは、知人のサイト制作に協力したのがきっかけだった。沖縄県が策定している振興計画の骨子案について、県内の有志が独自に勉強会を開催し、議論を通じパブリックコメントに反映させる活動を行なっている。その活動を周知するためのウェブサイトを作成することになったのだ。

 活動を知り、「こういうのもシビックテックになるんだ」と、社会の課題を解決するのにITが役に立つ実感が湧いたという。そして県内で活動する「Code for OKINAWA」に加わった。

 Code for OKINAWAは昨年、新型コロナウイルス感染症に関する様々な情報を分かりやすく伝える沖縄県の対策サイトを作成した。元々はCode for Japanが東京都版を開発してプログラムを公開、他の自治体でも対策サイトが立ち上がった。Code for OKINAWAがプログラムを引用し沖縄県版を作成。その後も日々のデータを反映させるなど運用を続けている。

骨の折れる作業

 そんな中、那覇市議選の立候補予定者から、掲示版へのポスター張り出し作業が大変だという話を聞く機会があった。那覇市議選選では市内に371カ所もの掲示板が設置される。場所によっては正確な住所がなく、掲示板が設置されている正しい位置が分かりずらかったり、住所にたどり着いても交差点の向こう側だったりする。短い選挙活動期間中にポスターを張って回るのは骨の折れる作業だ。

 現職市議や政党などは経験があるため効率的に張り出し作業を行えるが、初めて選挙活動をする新人や組織の後ろ盾がない候補だと、知見が共有されずに作業に手間取ることが多いという。

 実は那覇市は様々な行政情報をネット地図で表示する「なはMAP!」を公開している。トップページには公共施設、AED、避難所など多様な情報が掲載されているため、選挙ポスター掲示板情報のみを表示させるには、項目を探してクリックしなければならない。また地図を見るだけでは、閲覧者の位置情報が反映されないため、目的の掲示板までの経路図を表示するにも一手間かかる。

 「もっと分かりやすく見せる方法はないか」ー。大田さんは、それならば自分で掲示板マップを作ろうと考えた。「なはMAP!」に示される掲示板ポイントには位置情報が含まれている。行政機関がウェブサイトで公表するデータは「オープンデータ」である。さっそく、各掲示板の緯度経度の取得に取り掛かった。

オープンデータ(open data)とは

  • (1)広く開かれた利用が許可されているデータ。
  • (2)狭義では、機械判読に適したデータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで公開された公共データ。行政機関が保有する地理空間情報、防災・減災情報、調達情報、統計情報など。行政機関の透明性・信頼性の向上、国民参加・官民協働の推進、経済の活性化・行政の効率化に資する。

    (出典:大辞林 第三版より)

 大田さんが取得した緯度経度データをGoogleマップに落とし込み、独自の掲示板マップを作成するまで、およそ30分ほど。ウェブページも2時間足らずで完成した。アイデアを思いたち1人で作業して公開まで6月26日の1日でできた。

●那覇市選挙ポスターOPEN DATA化作戦

https://www.notion.so/OPEN-DATA-adfe66fbf70b4a819a3b9fe2b28d7519

「那覇市選挙ポスターOPEN DATA化作戦」ページのスクリーンショット

 掲示板の位置情報そのものは「なはMap!」と同一のものだが、見せ方と使い勝手に工夫した形だ。

 工夫の一つ目は、閲覧者の現在地と目的の掲示板2点間の経路を簡単に表示させられること。ベースとなるGoogleマップの機能を使い、実現させた。

 二つ目は、この掲示板マップを、さらに使用者の必要に応じて設定を変更できるようにした。独自にデータを加工することで、ポスター張りの担当者別に掲示板を仕分け表示することもできる。

 選挙において、ノウハウがないためにポスターを張りきれない状況は、有権者が立候補者を知る機会が失われる恐れがある。大田さんが作成した掲示板マップは「位置情報をみんなが使えるデータにすることに意義がある」という。

 このマップを直接的に利用するのは選挙関係者などに限られそうだが、ポスター張りの経験差を公平にすることにもつながり、最終的には「選ぶ有権者にとってもメリットがある」とみている。

 オープンデータは、行政情報の取り扱いとも密接な関わりを持つ。各種情報のオープンデータ化が進めば、行政サービスの透明度を高め、市民にとってより良い改善へと後押しする効果も望めそうだ。

▶候補者の政策を分かりやすく紹介。那覇市議選の特設ページはこちら
https://www.okinawatimes.co.jp/feature/nahasigisen2021

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