医療のサポートが必要な子どもたちの「希望の一歩」となる。「社会で支える」との理念実現に向けて、さらに歩を進めたい。

 超党派による議員立法で「医療的ケア児」とその家族を支援する法律が成立、公布された。9月から施行される。

 医療的ケア児とは、胃にチューブで栄養を送る経管栄養や、気管切開に伴うたんの吸引など、日常的に医療を必要とする子どもたちのことである。

 公布された支援法の基本理念には「医療的ケア児の日常生活を社会全体で支える」と書き込まれている。さらに基本理念にのっとり、適切な対応を取ることを国や自治体の責務と明記する。社会的課題として共有していく重要性や、公的責任を明確にしたことの意味は大きい。

 具体的支援策は大きく二つ。

 保育所や学校に保護者が付き添って世話をする必要がなくなるよう、看護師らの配置を求めている。各都道府県には家族の相談に応じ、情報提供や助言をする「医療的ケア児支援センター」の設置を促している。

 2016年に改正された児童福祉法は、自治体が医療や福祉分野などと連携し支援に努めるよう定めた。しかし学びの場での受け入れは全体的に対応の遅れが目立ち、積極的な自治体とそうでない自治体との地域差も浮き彫りになった。

 今回、支援法が大きく踏み込んだのは教育を受ける権利の保障だ。

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 厚生労働省の19年の推計によると、自宅で暮らす医療的ケア児は全国に約2万人(県内は20年4月時点で275人)。医療技術の進歩によって、過去10年で2倍に増えている。

 一方、幼稚園や小中高校、特別支援学校に在籍するのは訪問教育を含め約1万人。支援学校が大半で、公立の小中高校に限ると約1200人にとどまる。

 医療的ケアが理由で希望する学校に通えなかったり、通えた場合でも「保護者の付き添い」を求められたりするケースが少なくない。

 「ケアのため仕事を辞めざるを得なかった」「登校から下校まで待機していなければならない」などの声は多く、家族、とりわけ母親の負担が大きい。

 支援法には「家族の離職防止」も掲げられている。子どもが学び育つ環境をしっかり整備すると同時に、障がいへの理解を深め、家族の就労や社会参加の機会も広げていく必要がある。

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 慢性的な人手不足の中、看護師をどのように確保するか。家族と接点を持つ支援センターをどう機能させるか。全国どこでもサポートが受けられる体制整備など、課題は山積みだ。

 憲法や子どもの権利条約などによって、全ての子どもは等しく教育を受ける権利が保障されている。

 必要な人材や予算が確保されなければ課題は解決されない。

 国が先頭に立って、理念の具体化を急ぐべきだ。