沖縄県糸満市潮崎町のサンエーしおざきシティ食品館で働いて約1年4カ月になる間瀬楽大(らくた)さん(18)=竹富町出身=は、「お客さんから一番話し掛けられやすい人」だ。商品を補充していると、特売品がどこに置いてあるかよく聞かれる。「うれしいけど、実感はないです」と小さめの声で照れる間瀬さん。会話が苦手で、小学校は初めのうち図書館に「避難」してやり過ごしたが、やがて登校できなくなった。「ここで働くのが自分で大丈夫なのか、今も不安はあります。でも、『もしかしたら大丈夫かも』って。そう思うようになりました」。(中部報道部・平島夏実)

パートナー社員として働く間瀬楽大さん。エプロンはいつも自分でアイロンをかける=5月26日、糸満市・サンエーしおざきシティ

食品売り場で企業体験をはじめたころの間瀬楽大さん=2019年

パートナー社員として働く間瀬楽大さん。エプロンはいつも自分でアイロンをかける=5月26日、糸満市・サンエーしおざきシティ 食品売り場で企業体験をはじめたころの間瀬楽大さん=2019年

 間瀬さんの小学校時代の記憶は「耳鳴りと頭痛」。大勢が大声で一斉におしゃべりする休み時間がきつかった。どんなことを話そうか一生懸命考えているうちに、話題はどんどん変わった。

 「落ち着いて、一対一で話したい」。小学校高学年の頃から学校への足が遠のくようになり、不登校が続いていた中学2年の夏、認定NPO法人(特定非営利活動法人)のフリースクール、侍学園沖縄校(八重瀬町)に出合った。

 在籍は5人。最大で週3回通い、オクラやゴーヤーを育てたり、学園祭向けの映像を作ったりした。校舎移転に合わせ、大工さんとペンキを塗る体験もできたと間瀬さんは振り返る。

 おととし10月には、支援団体が主催したサンエーの就業体験会に参加。「自分に接客業なんてできるのか」と尻込みしたが、終わってみての心境は「この仕事をいつか楽しめるようになりたい」だった。

 間瀬さんは、約4カ月後にアルバイトとして採用され、欠勤ゼロで勤務。ことし5月にはパート扱いの「パートナー社員」になった。サンエーしおざきシティの日配事業部チーフの屋富祖真理さんは、「スタッフがパタパタしていても、間瀬さんは穏やか。お客さんが話し掛けやすい雰囲気がある」と太鼓判を押す。

 侍学園沖縄校は2016年4月の開校以来、卒業生がまだいない。自立できた、と本人と学園が実感できれば卒業だ。休学中という形を取っている間瀬さんは「自分が何かをしようとする時、絶対に無理だと思ったら無理だけど、『もしかしたら大丈夫かも』って思うことは大事。第1号で卒業したいです」とはにかんだ。