沖縄県の国頭村を中心に、沖縄本島北部地域の海岸で密漁が横行している。狙われるのはイセエビ、サザエ、シャコガイなどの高級海産物。漁業権なしで採捕すると漁業法195条(漁業権の侵害)が適用される。組織ぐるみで販売目的のケースがほとんどで、漁協関係者はパトロールを重ねるが、犯行は後を絶たない。国頭漁協のパトロールに同行した。

密漁者(右)に話し掛ける国頭漁協の大城力さん=1日午後10時45分ごろ、国頭村

イセエビとサザエが入った網を見つけ、海上保安庁に連絡する伊藤さん=1日午後11時20分ごろ、国頭村

密漁者(右)に話し掛ける国頭漁協の大城力さん=1日午後10時45分ごろ、国頭村 イセエビとサザエが入った網を見つけ、海上保安庁に連絡する伊藤さん=1日午後11時20分ごろ、国頭村

■夜の海面に光るライト

 1日午後9時、漁師や漁協の職員4人が二手に分かれ、漁協事務所を出発。パトロールへ向かった。人影をうかがいながら、海岸沿いに車を走らせる。

 1時間後、海面に明るく光るライトを見つけた。近づくと突然消え、辺りは真っ暗闇に。近くの駐車場には1台の軽自動車が止まっている。身を潜めてしばらく様子を見ていると、ライトが再び海面を照らし、警戒するように辺りを見渡しながら、男がゆっくりと上陸してきた。

 漁協潜水部長の伊藤和浩さん(44)と業務課長の大城力さん(47)が近づき声を掛ける。密漁ではないかと伝えると「イセエビはやっていません」と男。確かに、車内のクーラーボックスに入っていたのは漁獲が禁止されていない魚だった。パトロールを警戒し、禁止された獲物を入れた網を持たずに上陸するケースも多いのだ。

 だが、海岸付近を念入りに探すと、イセエビやサザエが入った網が見つかった。中にはかなり小さなイセエビも含まれる。

 動揺した表情を浮かべる男。すぐに「申し訳ない」と犯行を認めた。約1時間後、海上保安官が到着し、事情聴取を始めると一転して否認。「イセエビは取っていない」と言い張った。

 男は保安官の到着までの間、誰かと電話で話すそぶりを見せていた。「否認するよう入れ知恵されたのだろう」と顔をしかめる伊藤さん。大城さんも眉間にしわを寄せ、怒りをにじませる。

 保安官は諭すように語り掛けたり、問い詰めたり、粘り強く追及する。男は30分以上否認を続けたが、次第に沈黙し始めた。言い逃れができないと感じたのか、最後はうなだれ、崩れるように犯行を認め、検挙された。

■獲物「裏ルート」で販売

 密漁者の中には、何人かが陸で見張り、別の数人が海に入るグループもある。多くが水中銃など、漁業者しか使用が認められない違法な漁具を使っている。獲物はセリに通さずに「裏ルート」で販売しているとみられる。密漁者が騒いだり、ごみを放置したりし、地域住民との間でトラブルになる事例もある。

 密漁は現行犯以外の検挙が難しいが、漁協関係者が見つけて海上保安庁に通報しても、現場到着まで2~3時間かかる。その間に逃走するケースや、ネットで調べたり仲間に相談したりして言い逃れし、検挙に至らないことも。

 国頭漁協は昨年、第11管区海上保安本部に国頭駐在所の設置を要請したが、まだ実現していない。村田佳久組合長は「密漁を減らすため、引き続き設置を求めていく」と話す。

 同漁協は漁獲サイズを県の規定より厳しく設定するなど、独自のルールで資源保護に取り組む。潜水部長の伊藤和浩さん(44)は「次の世代に資源を残すため、自ら厳しいルールを課しているのに、そばで密漁者が堂々と乱獲している」と憤る。「本来は漁に充てるべき貴重な時間と予算が、パトロールに割かれている」と嘆いた。

 イセエビやサザエなど、漁業権の対象種を漁協の組合員以外の人が捕ることは禁止され、違反すると最大100万円、ナマコなどは最大3千万円の罰金が科せられる。だが「この法律が目的通り機能していない」と伊藤さんは指摘する。

 北部地域の漁協は8月、連携して密漁を防ぐため「北部地区漁協密漁防止対策連絡協議会」を立ち上げる予定だ。漁協間での情報共有、海保や警察と連携したパトロールをさらに強化していく。