胸元に生徒の氏名が刺しゅうされたネーム入り制服。特に中学校では沖縄の定番スタイルだが、見直す学校も徐々に増えている。不審者に名前を知られることによって、犯罪やトラブルに巻き込まれる事案が全国的に相次いでいるためだ。防犯の専門家は「名前で呼ばれると、怪しいとは思ってもすぐには立ち去りにくい。目立つ場所に記名するのはリスクが高い」と指摘する。(編集委員・鈴木実)

氏名が書かれた学校の制服

 豊見城市の豊見城中学校は本年度の新入生から、セーラー服や詰め襟学生服、シャツの刺しゅうをやめた。その代わり、校内では着脱式の名札を付ける。指定のジャージーも、名前を記入するのは首元の内側だ。

 名護市の屋部中学校も、2年生の入学時から制服の刺しゅうはしていない。玉城晋教頭は「新型コロナウイルス対策のマスクで顔が半分隠れているので、最初は生徒の名前を覚えにくいという不便さはある」としつつ、「むやみに名前を知られたくないという保護者の不安は分かる。防犯や個人情報の保護が最優先」と話す。

 その他、フルネームではなく、「姓」だけを記す学校もある。

 小学校では、裏返しにできる名札を使ったり、登下校時には名札を外させたりすることが多い。しかし中学校では刺しゅうが主流のため、こうした対策は遅れている。

 高校では制服への刺しゅうは一般的でないものの、ジャージーや体操着ではよく見られる。新型コロナウイルスが問題になって以降、更衣室の「三密」を避けるためにジャージー登校が広がっており、生徒の氏名が外部に知られやすい。

 佐賀県警は今年、名札やゼッケンの着用を見直すよう各教育委員会に要請した。登校中の複数の女児が見知らぬ男に撮影され、顔や名前が分かる画像がインターネット上の掲示板に投稿される事件が起きたためだ。

 2014年には埼玉県朝霞市で、当時中学生の女子生徒が誘拐され、2年間監禁される事件も起きた。逮捕された男は生徒を連れ去る際、名前を呼んで声掛けしたとされる。

 沖縄県内でも今年5月、中学校に通う女子生徒が帰宅途中、50代の男性に「○○(生徒の名字)ちゃんだよね」と声を掛けられる事案が発生した。女子生徒は名字が書かれた体操着姿で登下校していたという。県警は男性にむやみに声を掛けないよう警告した。

 日本こどもの安全教育総合研究所の宮田美恵子代表は「名前で呼ばれると、警戒心が薄らいだり、『親の知り合いかも』と考えてむげにはしにくくなったりしてしまう。中学生は部活や塾で帰りも遅く、不審者から狙われやすい」と指摘。「制服に限らず、バッグなどの持ち物も名前を書く場所を注意してほしい」と警鐘を鳴らす。