2021年度の沖縄タイムス伝統芸能選考会が11日、那覇市久茂地のタイムスビルであり、沖縄県立芸術大4年の三刀屋(みとや)美鈴さん(21)が胡弓(こきゅう)部門の新人賞に選ばれた。三刀屋さんは両目が不自由だが、耳や手先の研ぎ澄まされた感覚を生かし、三線や胡弓を学ぶ。今後は大学院に進み、琉球古典音楽の演奏家を目指す。(社会部・山中由睦)

胡弓を演奏する三刀屋美鈴さん=11日、那覇市久茂地

 三刀屋さんは出生時、未熟児だった。その影響で左目はまったく見えず、右目は手術を受けたが、形や色がぼんやり分かるくらい。ただ、「目が不自由じゃなければ」と思ったことは一度もなく、耳や鼻が鋭敏になり、音やにおいの変化を感じ取れるようになった。

 4歳から14歳までピアノを続けたが、中学2年で新たな「出合い」が待っていた。ユーチューブで琉球古典音楽を聴いた。奥深く、素朴でいてどこか華やかさもある音色にひかれた。幼い頃から沖縄には旅行で訪れていたが、この時は「100万ボルトの電流が体に流れた感覚」だった。

 東京に住んでいたが、高校時代は三線を勉強した。

沖縄県立芸術大で琉球の古典音楽が学べると知り、進学を希望。父母と沖縄に移り住んだ。入学後は三線に加え、胡弓を学んだ。

 目がほとんど見えない分だけ耳を生かした。何度も音源を聞きリズムをつかんだ。こすりながら弓を引く胡弓は、三線より少し音色が遅くなる感覚があった。その微妙な差を確認し、指の使い方を練習した。

 「これが胡弓の『呼吸』。微妙なメロディーの変化を意識することが隠し味になる」。毎日、大学や自宅などで練習を繰り返し、11日の選考会に臨んだ。

 演奏が始まる直前、鼻から息を吸い込んだ。鼻息でタイミングを取り、ゆっくり弓を引いた。演奏の途中、前にいる審査員が手元の紙の資料をめくる音がした。「私の経歴を確認している。関心を持ってくれている」。やる気が増して、演奏に力がこもった。

 約10分の2曲の演奏を、三刀屋さんは笑顔で振り返った。「審査員の顔が見えない分、緊張しなかった。私にはできないこともあるけど、できることを大切にしたい」。音楽を通じ、困っている人たちを元気にする演奏家になること。夢は、着実に近づいている。