沖縄と奄美が誇る豊かな自然が、世界の宝として認められた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を世界自然遺産に登録すると決定した。

 本島北部のヤンバルクイナやノグチゲラ、西表島のイリオモテヤマネコ、奄美大島と徳之島のアマミノクロウサギ-。これらの貴重な固有種に代表される4島の生物多様性が評価された。決定を大いに喜びたい。

 登録に期待を寄せてきた地元関係者らにとって、待ちに待った朗報だ。

 政府の最初の推薦書提出から4年余り。この日を迎えるまでには、推薦区域の設定を巡りユネスコ諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)から抜本的な見直しを求められ、いったん推薦を取り下げ再チャレンジした経緯もある。

 ただ、登録はゴールではない。私たちは人類共通の遺産として認められた亜熱帯の森を守り、未来へつなぐ責任を負ったのである。そのスタート地点に立ったばかりであり、責務の重さを自覚しなければならない。

 推薦書によると、4島にはIUCNレッドリスト記載の絶滅危惧種が95種(うち固有種は75種)が確認されている。保護活動の強化は待ったなしだ。

 一方で、登録された地域は住民の生活圏に近い。自然遺産と共生し、持続可能な地域づくりをどう進めるか。保護と地域活性化のバランスも問われている。

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 地元からは歓迎だけでなく不安の声もある。観光客増加による「オーバーツーリズム」などの影響だ。特に懸念が強い西表島について、県は観光客の上限数を地元側と協議し、1日当たり1230人、年間約33万人に制限することを決めた。ただ、これは目標値にすぎず実効性は不透明だ。

 希少種の交通事故死も各地で起きている。看板で注意喚起したり、西表島では県がヤマネコの道路進入抑制柵などを整備しているが事故を防げていない。

 1993年に自然遺産に登録された屋久島(鹿児島県)では、登録直後に観光客が急増し巨大杉の周辺で植生の踏み荒らしが一時指摘された。

 沖縄や奄美でも、コロナ禍が収まり次第、同様の事態が想定される。観光振興への期待はあるにせよ、生態系を守ることを前提に厳格なルールを敷くべきである。

 希少種の密猟やペットを捨てる行為などにも厳しい対処が必要だ。

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 沖縄島北部の登録区域には米軍北部訓練場の返還地が含まれる。

 防衛省は引き渡し前に廃棄物などを除去したと説明する。だが実際には米軍のものとみられる空包類や大型鉄板が多数見つかっている。生態系の破壊につながりかねない。改めて調べてもらいたい。

 訓練場は約半分が残り、オスプレイの離着陸などによる生物への影響が懸念される。生態系を守る責務は政府にもある。隣り合う訓練場に何の規制もかけずに「遺産」を維持することはできない。