「悪意のない嘘(うそ)は必要な嘘である」との言い方がある。相手を無用に傷付けないためには、時に事実と違うことを言ったとしても許されるという意味である

▼さて、この番組の「ウソ」は、どうなのだろう。東京の地上波テレビ局が2日に放映した番組で、東村高江での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動の実態を事実と異なる解説を加え、沖縄に対するヘイトスピーチだと批判されている(11日付本紙)

▼番組では、「過激派が救急車も止めた?」との虚偽のネット情報をそのまま紹介。警察が抗議行動を取り締まらないのは、「警察のトップが翁長知事だから」と事実誤認の説明をしている

▼以前、在京テレビ局の関係者から、沖縄問題を真面目に扱ったら数字(視聴率)が取れないという嘆き節を聞いたことがある。まさか、事実をねじ曲げて数字が取れるなら、それは必要な嘘だとでも言うのか。公共の電波を使うテレビ局には越えてはいけない一線があろう

▼〈冗談のようなホントがあり/涙ながらのウソがあって/なにがホントでどれがウソやら〉。詩人の川崎洋さんの「ウソ」という作品の一節である

▼なにがホントでどれがウソかは構わない。番組からは、冗談のような「ウソ」を広く振りまき、沖縄と本土を分断しようという明確な「悪意」が伝わってくる。(稲嶺幸弘)