玉城デニー知事は名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立て予定海域に生息するサンゴ約4万群体について国に出していた特別採捕の許可を撤回した。

 移植のための採捕を許可してからわずか2日後。行政として異例の判断である。

 サンゴ採捕を巡っては、国を相手取った訴訟で県の敗訴が確定したため、やむなく許可を決めた経緯がある。

 ただ、県はサンゴの生存率を高めるために条件を付けていた。高水温や繁殖の時期、台風の季節を避けること、移植後には週に1度の経過観察と県への報告を行うことだ。

 自然保護の専門家らからは甘さが指摘される措置だったが、国はそれさえも守らなかった。許可の翌日、夏の高水温期にもかかわらずサンゴ移植作業を開始したのである。

 県の行政指導にも、沖縄防衛局は「条件は順守しており中止しない」と聞く耳をもたなかった。

 守るべき最低限の条件が守られなかった。不誠実極まりない。国の強引な手法に抗議する。

 新基地建設に伴うサンゴ移植は、これまでも保全の目的を果たせていない。2018年に辺野古の埋め立て区域から移植された絶滅危惧種のオキナワハマサンゴ9群体は、すでに5群体が死滅や消失している。

 こうした実態を踏まえれば、移植には、より丁寧で慎重な対応が求められていた。「ただでさえ高くないサンゴの生残率をますます低下させる行為で、水産資源保護法の趣旨に反している」とする玉城知事の批判はもっともだ。

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 仲井真弘多元知事が埋め立てを承認した際の留意事項の一つに、工事中の環境保全対策がある。

 しかし、その後の国の姿勢は全てにおいて新基地工事の推進が優先され、サンゴの保全は二の次になってしまっている。

 県の採捕許可後、国がすぐに移植作業に着手したのは、軟弱地盤の改良工事に伴う埋め立て変更承認申請に対し、玉城知事の不承認を見据えたものだろう。

 県への連絡や調整もない。県民の懸念を無視してまでも突然作業を始めた国の強引な姿勢には、少しでも既成事実を積み上げようとする意図が透けて見える。これでは不信感が募るばかりだ。

 玉城知事は今月中旬にも不承認と判断する方向で調整しているという。県民へ説明を尽くし理解を得た上で毅然(きぜん)とした対応を求めたい。

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 沖縄本島北部の森は、貴重な固有種が根付く生物多様性が評価され、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録された。人類共通の宝として守る責任が課された。

 そのそばに広がる辺野古・大浦湾一帯の生態系も世界的に貴重だ。絶滅危惧種を含め5千種以上の生物が生息し多様性を誇る。

 陸と海の生態系はつながっている。自然遺産に連なる豊かな海に7万1千本ものくいを打ち込む計画は、自然への影響をあまりにも軽視し過ぎている。