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走り幅跳び津波響樹、無念の26位 「またゼロから考えていきたい」

2021年8月1日 13:10

 五輪の舞台に、男子走り幅跳びの津波響樹(大塚製薬)がのみ込まれた。日本選手権で痛めた左足首は治り、状態は万全。準備運動の段階から調子も良く、1本目から予選通過記録の8メートル15を狙えるほどだったという。だが「ピットに立つと、急に自分の力が出せなくなった」。記録は7メートル61止まりで26位に終わった。

男子走り幅跳び予選 津波響樹の1回目=国立競技場

1972年ミュンヘン五輪のブレザーを着て、当時の思い出を語る具志堅興清さん。陸上選手団の寄せ書きにはマラソンの君原健二らの名前も=2019年12月、岐阜県可児市

男子走り幅跳び予選 津波響樹の1回目=国立競技場 1972年ミュンヘン五輪のブレザーを着て、当時の思い出を語る具志堅興清さん。陸上選手団の寄せ書きにはマラソンの君原健二らの名前も=2019年12月、岐阜県可児市

 先に跳んだ橋岡優輝(富士通)が1本目で8メートル17をマークし、「その勢いに乗り、自分もいけると自信もあった」と振り返る。だが1本目は7メートル52で、今季自己ベストの7メートル91を大きく下回った。2本目で7メートル61と伸ばしたものの予選通過ラインにはほど遠く、最終3本目も7メートル55にとどまった。

 8メートル23を跳んで五輪参加標準記録を突破した2019年以降、記録が伸び悩む。けがが多いため十分に練習が積めず、「一番良かった2年前の走りができない。超えるというより近づきたい」と模索の中にある。五輪も含めてこれまでの大会を分析し、「またゼロから考えていきたい」と仕切り直す意向だ。

 試合後のインタビューでは真っ先に感謝の言葉を口にした。コロナ禍で五輪が開催され、たくさんの支えがあってこの舞台にたどり着けた。実感を込め、「本当に五輪に参加できて幸せだった」と語る。

 30日の全国高校総体女子円盤投げで優勝した、母校の後輩の友利晟弓に刺激を受けて臨んだ五輪だった。「ずっと憧れの選手として、沖縄の近い存在として。そういう選手でいたい」。約半世紀ぶりに沖縄陸上界から誕生したオリンピアンはこれからも先頭に立ち、後輩たちを引っ張っていく。(我喜屋あかね)

■県内からねぎらいの声

 惜しくも予選通過を逃した男子走り幅跳びの津波響樹(大塚製薬)だったが、高校時代の恩師や県内の陸上関係者からは感謝やねぎらいの言葉が相次いだ。

 那覇西高陸上部監督として津波を指導し、現在は中部商高の仲宗根敏晃教頭は「わくわくした思いで五輪を見ることができた。感謝の気持ちでいっぱい」と感慨深げ。世界を舞台に戦う教え子の姿に元気をもらったという。

 決戦当日、選手村を出る直前の津波から「行ってきます」と活躍を期すLINEが届き、面倒を掛けないようにと親指を立てたスタンプだけ返した。この2年間の重圧や負傷も気に掛け、「お疲れさまと言いたい」とねぎらった。

 沖縄陸上競技協会の國場馨会長は、県勢約50年ぶりの五輪の陸上出場に「歴史を切り開いたことは県内の競技者に大きな勇気を与えた」とたたえた。予選敗退の結果には「本人が一番悔しい思いをしていると思う。まだ23歳と若い。五輪の悔しさは五輪で返してほしい」と述べ、パリでの雪辱を期待した。

■「いい経験にして」

 1972年のミュンヘン大会で、県出身で初めて五輪出場を果たした陸上男子三段跳びの具志堅興清さん(79)=写真、今帰仁村出身、岐阜県在住=は、決勝進出を果たせなかった津波響樹を「ちょっと硬くなっていたね。緊張していたと思う」とおもんぱかった。

 身長168センチの津波と同様、自身も172センチというサイズの不利をスプリント力で克服してきた。「僕らの時代から沖縄はジャンプ系が強かった。走り幅跳びも三段跳びも、助走のスピードがつけば記録が伸びていく」と自分に重ね合わせ、「津波選手はすごくスピードがある」と評価した。

 「五輪には独特のムードがある」と振り返る具志堅さん。ミュンヘンでは予選で2度のファウルを重ねて1センチ足りず、決勝に進めなかった。23歳の津波には「まだ若い。自分の欠点も分かり、いい経験になったと思う。次はいい記録が出る」と期待する。

 「沖縄の陸上は他の競技に比べてまだ弱い。引っ張っていってほしい」。沖縄陸上界2人目のオリンピアンに未来を託した。

■陸上(第9日)

 男子100メートル予選で多田修平(住友電工)は10秒22の1組6着、山県亮太(セイコー)は10秒15で3組4着、小池祐貴(住友電工)は10秒22の4組4着で全員落選した。

 男子走り幅跳び予選は橋岡優輝(富士通)が1回目に8メートル17を跳び、日本勢37年ぶりの決勝進出を決めた。城山正太郎(ゼンリン)が7メートル70、豊見城市出身の津波響樹(23)=那覇西高-東洋大出、大塚製薬=は7メートル61の26位で、上位12人による8月2日の決勝に進めなかった。津波は試技を3本とも成功させたが7メートル52、7メートル61、7メートル55と記録を伸ばせなかった。

 女子100メートル障害予選で寺田明日香(ジャパンクリエイト)が12秒95の5組5着となり、タイムで拾われ準決勝に進出した。木村文子(エディオン)は1組7着、青木益未(七十七銀行)は3組7着で落選。

 女子100メートルは29歳のエレーン・トンプソンヘラが決勝を10秒61の五輪新記録で制し2連覇。2位はシェリーアン・フレーザープライス、3位はシェリカ・ジャクソンとジャマイカ勢が表彰台を独占した。新種目の混合1600メートルリレーは、ポーランドが3分9秒87で優勝。

 【男子】

 ▽走り幅跳び予選(上位12人が決勝進出)(1)エチェバリア(キューバ)8メートル50(3)橋岡優輝(富士通)8メートル17(23)城山正太郎(ゼンリン)7メートル70=落選(26)津波響樹(大塚製薬)7メートル61=落選

 ▽100メートル予選(7組3着までと4着以下3人が準決勝進出)

 「1組」(1)ベーカー(米国)10秒03(6)多田修平(住友電工)10秒22=落選

 「3組」(1)ヤコブス(イタリア)9秒94(4)山県亮太(セイコー)10秒15=落選

 「4組」(1)レオトレラ(南アフリカ)10秒04(4)小池祐貴(住友電工)10秒22=落選

 ▽棒高跳び予選(上位14人が決勝進出)(25)江島雅紀(富士通)5メートル30(25)山本聖途(トヨタ自動車)5メートル30=以上落選

 【女子】

 ▽100メートル決勝 (1)エレーン・トンプソンヘラ(ジャマイカ)10秒61=五輪新(2)フレーザープライス(ジャマイカ)10秒74(3)ジャクソン(ジャマイカ)10秒76(4)タルー(コートジボワール)10秒91(5)デルポンテ(スイス)10秒97(6)M・カンブンジ(スイス)10秒99(7)ダニエルズ(米国)11秒02(8)ネイタ(英国)11秒12

 ▽100メートル障害予選(5組4着までと5着以下4人が準決勝進出)

 「1組」(1)A・バルガス(コスタリカ)12秒71(7)木村文子(エディオン)13秒25=落選

 「3組」(1)アムサン(ナイジェリア)12秒72(7)青木益未(七十七銀行)13秒59=落選

 「5組」(1)カマチョクィン(プエルトリコ)12秒41(5)寺田明日香(ジャパンクリエイト)12秒95=準決勝進出

 【混合】

 ▽1600メートルリレー決勝 (1)ポーランド(ザレフスキ、カチマレク、シビエンティエルセティツ、ドゥシニスキ)3分9秒87(2)ドミニカ共和国3分10秒21(3)米国3分10秒22(4)オランダ3分10秒36(5)ベルギー3分11秒51(6)英国3分12秒07(7)ジャマイカ3分14秒95(8)アイルランド3分15秒04、ドイツ=失格

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