銀髪の時代 「老い」を生きる

物忘れ続き検査で発覚 医師に呼ばれ「ただただ、ショック」【銀髪の時代】

2017年1月20日 21:00

 【連載・銀髪の時代 「老い」を生きる】

妻芳江さんの薬が入ったケース。弘さんが曜日、時間帯ごとに細かく分けている

 「やっぱり、何かおかしい」。糸満市の島袋弘さん(76)は、妻芳江さん(74)の言動に同じく異変を感じていた長男の妻や家族と相談し、芳江さんを病院に連れて行くことを決めた。

 だが、幾度となく「健康診断に行こう」などと持ちかけても「何で、私が行かないといけないの」とかたくなに拒まれた。いい口実が見つからないまま約1年が過ぎた5年前のある日。

 芳江さんと口論になった弘さんが、勢いに任せて言い放った。「あなたは自分で言ったことを忘れる。病院に行った方がいい!」。売り言葉に買い言葉で「じゃあ行くよ!」と応えた芳江さんは、病院で認知症テストやMRIなどの検査を受けた。

 テストの結果は「軽度認知症」が疑われる点数だった。脳の萎縮もみられた。「アルツハイマー型認知症です」。弘さんだけが呼ばれた病室で、医師の言葉に「ただただ、ショックだった」。だが、「やっぱりか」とも思った。思い当たるふしがあったからだ。

 弘さんとけんかして「出て行きなさい!」と怒鳴った芳江さんは、数分後に「私がそんなこと言うわけないじゃない!」と真剣な顔で否定する。芳江さんがウークイで料理の手順を間違えた後から、弘さんはわざと「今日は何日?」と聞くようになった。「(自分で)カレンダーを見て」とはぐらかされ、弘さんも「単なる物忘れか」と思うこともあった。

 今考えると「全て認知症の症状だったはず」と振り返る。「でも、自覚がない妻に伝えられなかった」。今も妻は病名を知らない。

 診断から5年。週末に家に遊びに来る子や孫たちも、芳江さんの症状を受け入れている。弘さんは「家族の協力が本当に心強い。ちゃんと妻のことを理解してくれている」と話す。

 芳江さんが特に気に掛けるのは、一番年下の高校1年生の孫娘。

「ご飯食べた?」

「いくつになった?」

 繰り返し尋ねる祖母に、その都度、答えを返してくれる。時には困ってそっぽを向いたり、その場から立ち去ることもある。それでも愛情たっぷりにかわいがってくれる芳江さんに、厳しい言葉を向けることは決してない。

 弘さんは介護日記につづった。

 2016年3月16日 〈孫娘の高校合格を家族で祝った。それでも「何年生?」と何度も何度も聞く。孫は何度も何度も答えていた。いやな顔せず! えらい!〉=文中仮名(「銀髪の時代」取材班・新垣卓也)

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