社説

社説[コロナ原則自宅療養]それで命が救えるのか

2021年8月5日 07:14

 新型コロナウイルス感染症を巡って、政府が打ち出した新たな方針が、大きな波紋を呼んでいる。

 入院対象を重症者や重症化リスクの高い人に限定し、それ以外は自宅療養を基本とする-。平たく言えば「入院制限」である。

 全国的に感染が急拡大しているさなかに、現場の不安をいっそうかきたてるような方針転換が、唐突に打ち出された。

 背景にあるのは次のような事情だ。

 第一に、デルタ株の急激な広がりで新規感染者が全国で1万人を超える日が続き、病床不足への懸念が強まっていること。

 第二に、軽症者や中等症の人が入院していたために重症者の病床が確保できなくなったという事例が過去に発生したこと、などである。

 感染の急拡大は尋常でない。沖縄県が4日に確認した新規感染者は602人、東京都は4166人。全国では1万4千人を超え、いずれも過去最多となった。

 だが、そのような感染拡大の事情を考慮に入れたとしても、今度の方針転換は、あまりにも「泥縄的」で「場当たり的」だ。

 これまで何度も「人流が抑えられている」ことを強調し、楽観論を振りまいてきたのは、ほかでもない菅義偉首相である。

 ワクチン頼みの政策で医療供給体制の拡充は遅れ、肝心のワクチン接種もデルタ株の猛烈なスピードに追い付かず、現在の事態を招いてしまったのである。

■    ■

 公明党の高木美智代政調会長代理は衆院厚生労働委員会で政府方針を批判し「撤回も含め検討し直してほしい」と求めた。野党だけでなく与党からも強い危機感が示されたのである。

 新たな方針によって、肺炎などの症状がある中等症の患者も自宅療養となる可能性がある。田村憲久厚労相は、診療報酬を加算し、訪問看護を充実させると答弁した。

 症状が急速に悪化するのがコロナウイルスの特徴だ。容体急変に迅速に対応することが本当にできるのか。

 自宅療養によって家庭内感染が広がる懸念も拭えない。1人暮らしや自宅療養ができないような居住環境の人もいるはずだ。不安はつきない。

 今回の方針転換は、自治体や医療界と事前に調整し、入院基準などさまざまな課題を整理した上で打ち出されたものではない。

 いったん方針を撤回し、制度を設計し直した方がいい。

■    ■

 県内の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者は178・43人で、全国平均の58・71を大幅に上回り、最悪の状態が続いている。

 自宅療養者は1414人。妊婦の感染拡大が急増しているのも気になるところだ。

 県は中等症や一部の軽症も入院させている現在の対応を「基本的に変更しない」(糸数公医療技監)という。

 今後、感染爆発が続いた場合でも、病床が確保されていて、医療崩壊を招かない用意ができていること-それが前提でなければならない。

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