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喜友名諒が亡き母にささげた金 天仰ぎ「約束守ったよ」

2021年8月7日 08:27

 金メダル獲得を決め、喜友名諒選手(劉衛流龍鳳会)は武道の聖地・日本武道館の天井をじっと見つめた。「約束を守ったよ」。2019年2月に亡くなった母・紀江さん(享年57)と、五輪での優勝を誓っていた。優勝インタビューで畳に礼をした理由を問われると、眉間にしわを寄せて唇をかみ、涙をこらえて語った。「母親にしっかり優勝したよと報告しました」

プレミアリーグ沖縄大会で金メダルを獲得した喜友名諒(右)と笑顔で写真に写る母紀江さん=2015年11月、県立武道館(提供)

空手男子形で獲得した金メダルを胸に笑顔の喜友名諒=日本武道館

プレミアリーグ沖縄大会で金メダルを獲得した喜友名諒(右)と笑顔で写真に写る母紀江さん=2015年11月、県立武道館(提供) 空手男子形で獲得した金メダルを胸に笑顔の喜友名諒=日本武道館

 5歳で空手を始めた喜友名選手を、紀江さんはずっと見守ってきた。大会は父勇さん(59)らと家族で観戦。幼い頃から県内ではほとんど負けることはなかったが、元々「負けず嫌い」(勇さん)な性格。悔しい表情を見せれば紀江さんは「次、頑張りなさい」とそっと背中を押した。

 初めて個人形で全国優勝した中学2年の全国中学生選手権は、大分県まで応援に駆け付けた。興南高に進学してからは週2~3回、道場のある恩納村まで勇さんと交互に送り迎えした。世界一の瞬間を見届けようと、世界選手権は2012年パリ、16年オーストリアと2度、現地で観戦した。家族全員で、世界を目指す喜友名選手を支えていた。

 紀江さんが、乳がんを患ったのは10年ほど前。世界選手権当時は通院しながら治療していた。16年に空手が東京五輪の正式種目に決まり、勇さんは「オリンピックまで頑張ろうねと、勇気づけられた」。だが19年1月に病状が悪化し、2月28日に息を引き取った。

 自宅で見守った勇さんは「この日を一緒に迎えられたら良かった」としながらも「天国で喜んでいると思う。帰って来たらメダルを1番に掛けてあげたい」と愛妻の写真を見つめる。

 喜友名選手の師匠、佐久本嗣男さんは、病床の紀江さんと「必ず勝つ」と約束した。「お母さんが亡くなり、つらかったはずなのに弱音一つ吐かなかった。親孝行者だね」とほほ笑む。

 表彰台のてっぺんで喜友名選手は、ジャージーから紀江さんの遺影を取り出し、心の中で語り掛けた。「約束を守ったよ。安心してね」。金メダルを手に、誇らしげに笑った。

(運動部・我喜屋あかね、社会部・屋宜菜々子)

喜友名諒のこれまでの歩みを特設サイトで紹介中 形の解説動画も

「喜友名諒 頂への道」


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