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知事選と市議選に立候補したサラリーマン、いま選挙に求めること  

2021年8月10日 10:29

 7月11日に投開票された那覇市議会議員選挙(定数40)の選挙期間中、政党に属さない「無所属」の新人候補者同士で、公営掲示板へのポスター貼りを協力したり一緒にスポット演説したりする場面があった。仕掛け人は立候補者の一人、カネシマシュン(兼島俊)さん(43)。自らは那覇市議選の得票645票で63人中53番目で落選した。2018年の県知事選に突如立候補して、沖縄では名前を知っている人も多いはず。IT企業勤めのサラリーマンでありながら、ツイッターフォロワー数は市議選を経て500人アップの約2400人。候補者同士が互いに助け合い選挙活動を実践した目的は何だったのか。その効果は? 話を聞いてみた。(社会部・勝浦大輔)

那覇市議選の公営ポスター掲示板前で写真に収まる兼島俊さん。独特なポスターデザインもSNS上で話題となった=7月13日、那覇市内(撮影時のみマスクを外しています)

■「政治家になりたいわけではない」

ーー市議選では落選しました。結果をどう受け止めますか?
「純粋に民意を受け入れます。今の選挙のやり方での民意が出た。僕は選ばれなかっただけ。当選した皆さんに『本当にお願いします』と託す気持ちです」
 
ーー選挙活動はSNS中心でしたね。
「投票率が50%を切る中で、街宣活動もせず、ネットだけの活動で645票を獲得したことは、僕は、多い方だと思う。僕が当選して結果で証明できれば良かったんですけど、やり方自体は間違っていないと思っています。次世代の選挙のやり方、礎にはなれたんじゃないかと」

ーー3年前の県知事選に出ていますね。次が那覇市議選。立て続けに立候補した理由は?
「政治家になりたいわけではないです。自分がやりたい事を最大限できると思った立場が政治家であっただけです。知事選もそうでしたけど、那覇市議選に出た理由も同じです。沖縄を変えたいと思ったからです」
 「政治家でもないのに、突然県知事選に出たのは今思うとめちゃくちゃクレイジーでしたね。あの知事選で学んだのは、県知事や那覇市長になっても1人じゃ何もできないこと。なので、市議選では選挙活動中から、将来の市議の仲間をつくろうと思いました」

ーーなぜ那覇市議選なのか
「沖縄を変えるなら、県庁所在地であり、中心地である那覇を変えないとダメだと思った。大臣経験者や、元沖縄県知事など政治家の先輩たちに相談したら、みんな『1個ずつ上って行った方がいいよ』って言っていて。今出られる選挙って何だろうと探したら、那覇市議選がちょうどあって。これが1年くらい前です」
 
ーー沖縄を変えたいという理由は
「行政を便利にしたい、暮らしを楽にできたら良いと思っています。僕らの声ってどこに上がって、どうなっているかわからなくて。政党やマスコミからの情報も僕からするとブラックボックスで中身が見えない。用意された選択肢を選ばされている気がします」
「そこで、行政でやっていることをITを使って可視化したいと考えました。市民から上がった声がどう反映されて、どう形になって進んでいるのか。進捗状況はどうのなのか、何が問題で進んでないのかなど、一目で分かるようなシステムを入れたいと思っています。みんなが、『自分の声が反映されている』と感じることができたら、世の中のことが自分ごととして捉えられるようになると思います。おもしろくないですか?」
 
ーーそんな風に考えるようになったきっかけは?
「僕に子どもができた時、どんな未来をプレゼントしたいかと考えました。もうちょっと便利に、良い状態にできるんじゃないかなって。自分たちの意見が反映されるような未来だったらすごくいいなと思った。そのために僕には何ができるんだろうかと。暮らしを良くするためには、政治家になることが最適かなと考えました」
 

■サラリーマンを続けながら選挙

選挙戦を振り返る兼島俊さん(撮影時のみマスクを外しています)


ーー那覇市議選への立候補まではどんな流れでしたか
「昨年7月から立候補に向けていろいろ考え出して、昨年12月に選挙に向けて、当時勤めていたIT企業を辞めました。そしたら、今の会社(IT関係)から声をかけてもらって。選挙に出ることを伝えても『それでもいいから手伝って』と言われて今の会社に入社しました」
 
ーーでは、仕事をしながら選挙の準備をしたのですね
「サラリーマンが仕事をしながら選挙の準備、活動というのはとても難しかったです。でも、これが当たり前にならないと『どっか(政党)に入らないと出られないのか』となってしまうので、しんどかったけど、誰もやらないなら僕がやった方がいいなと。当選はできなかったけど、考え方は間違っていないと思ってます。もっと普通の働く人が選挙に出られる仕組みにした方がいい」
「市議は兼業がオーケーなので、ちょうど良かったです。僕が市議になって、仕事もうまく続けられていれば、次の兼業する市議が出てくる。そういう考えもありました」
「今回、現役サラリーマンの僕が立候補したことや僕の選挙活動をきっかけに、『政治家になってみたいな、どうやって選挙に出るんだろう』という人が10人でも出てきたら、それだけでもやってきた意味があるんじゃないかと思っています」
 
ーーSNSを中心に選挙活動を展開した理由は
「僕が有権者側だったら、(街頭の活動は)騒がしいし、やってほしくなかった。街宣、演説はやらない。なるべく迷惑にならいように。資金力があっても、車回すだけで音は出さないとか、そんなやり方だったと思います」

■ 立候補者同士の協力

ーー市議選では、候補者同士で公営掲示板(那覇市内371カ所)にポスター貼ったり、互いの演説を手伝ったりしていました
「僕ら組織力の無い立候補者は、仲間を集めることが必要だと考えました。まず最初に困るのが、ポスター貼り。県知事選に立候補した時も、1人でポスターを貼ることができなくて、同じ立候補者の渡口初美さんや現知事のデニーさんの支持者に声を掛けてもらって手伝ってもらったことがありました。1つの掲示板に数人分の候補者のポスターを貼っても労力は変わらない。何で他の人は協力しないんだろうって思いました」
「立候補者4、5人で集まって、それぞれの演説をしたこともあります。機材は持ってる人のを借りて。『仲間との協力』なので、僕は演説しませんでしたが、動画を撮ったりして手伝いました。立候補者の事務所を回って応援したり、ため書きを書いたりしたこともあります(笑)」
「お笑いの『第7世代』って言うじゃないですか。あれの選挙バージョン、新しい選挙をやるというか、選挙のアップデート、それが今回、沖縄でできたと思っています。メンバーは主にツイッターでつながった立候補者たちです」

街頭演説で交互にマイクを握った那覇市議選立候補者。左から維新の當銘和樹さん、無所属の徳永貴志さん、金城盛一郎さん、兼島俊さん。兼島さんは演説はせず、動画撮影など手伝っていた=7月9日、那覇市おもろまち

ーー兼島さんの選挙ポスターはデザインが特徴的で種類も豊富でしたね。
「5人のバンドマンが、6種類つくりました。うち1種類は8枚しかつくっていないレアものです。既存のポスターだと、候補者のアップの写真が多いじゃないですか。もっと若者の興味を引きつけたかったというのがあります。『選挙っておもしろいんだ』と思ってほしかった。1種類だと、万人受けする無難なものになるので、いろいろな人に見てもらえるように複数のデザインを作りました」

ーー選挙後にツイッターで「もう政治家を目指すのは終わり」と発言していますね。もう立候補しないんですか
「正直、しんどいです(笑)。今のところ考えてません。今回の選挙で、(政党の)組織力を嫌というほど見せつけられました。ただ、悔しい気持ちが残っている、というのが本音です」

那覇市議選のポスターデザインのステッカー。最終盤で2カ所だけこのステッカーに掲示板のポスターを貼り替えたらしい。下段中央は知事選時のポスターデザインで、8枚しか作っていない。

 
ーー今後はどうする?
「自分なりに政治に関わる行動はします。秋に衆院選がありますよね。ここで、那覇の投票率を過去最高にしようと思って、準備を始めています。沖縄から全国に衝撃を与えたいです。投票率が最低から最高になったらおもしろいですよね。若者を動かす方法を考えてます。失敗したらすみません(笑)」

かねしま・しゅん 1978年生まれ。沖縄市出身。陽明高校卒。フリーター、バンドマン、日雇い労働者、ホームレス、自営業などを経て33歳で初めて定職に就き、以来、IT業界で働く。2018年の沖縄県知事選に供託金300万円を借金して立候補。玉城デニー現知事が過去最多39万6632票で当選する中、得票3638票の4人中3番手で落選した。現在は仕事で沖縄、東京などを拠点に活動している。

▶候補者の政策を分かりやすく紹介。那覇市議選の特設ページはこちら
https://www.okinawatimes.co.jp/feature/nahasigisen2021

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