広がる事業承継、「まずは相談を」 沖縄県産業振興公社が補助事業募集

 全国的に課題となっている中小企業や個人事業主の廃業問題。創業から培ってきた経営資源やノウハウを失うだけでなく、従業員の雇用喪失、取引先の売り上げ減少など地域経済にも深刻な影響を与えている。後継者不在率が全国トップの沖縄は、廃業が増える懸念が高い。一方、親族や従業員、他企業に事業をつなげる事業承継が広がっており、行政や金融機関は「相談することで新たな道が開ける」と呼びかけている。

休廃業が過去最多、沖縄の深刻な事情

沖縄県内の休廃業・解散は、倒産件数を上回っている(東京商工リサーチ沖縄支店調べ)

 沖縄県内の休廃業・解散が2020年は384件で過去最多を更新。東京商工リサーチ沖縄支店が今年2月に発表した数字に衝撃が走った。

 県内企業の後継者不在率は2020年度に81%と4年連続で全国1位(帝国データバンク沖縄支店調べ)で、「事業承継の備えが追いついていない」との懸念が強い。そこへ、新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、休廃業が過去最多となった。

沖縄県でも広がる事業承継

 後継者不足は全国的にも課題となっており、中小企業庁は、中小企業・小規模事業者の廃業の急増で、2025年ごろまでの累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があると指摘。事業承継の必要性を訴え、推進している。

 沖縄県内でも経済成長の維持に向け、沖縄県が事業承継に係る費用の一部を補助する「沖縄県事業承継推進事業」を実施するなど、行政や金融機関が推進に取り組んでいる。事業承継の件数も増えており、地域の雇用維持、産業発展の継続に一役買っている。

 創業74年の上原酒造(糸満市)は今年2月、M&Aによる株式譲渡で、観光施設「おきなわワールド」を運営する南都(南城市)に事業承継を果たした。  

株式譲渡契約書に調印した南都の大城宗直社長(右)と上原酒造の上原長榮社長=南城市のおきなわワールド

受け継いだ創業74年の理念、泡盛酒造の事例

 3代目社長を務めた上原長榮さんは「専門家のアドバイスがあってこそ成功できた。相談してよかった」と振り返る。泡盛業界は、若者のアルコール離れなどで厳しい経営が続いている。老朽化した設備更新の費用捻出も難しく、4年前から事業承継を模索していたという。

 大口取引先の南都に事業の引き取りを打診していたが、具体的な手続きが分からない。思い切って、沖縄県事業承継・引継ぎセンターに相談した。両社の意思決定、企業価値評価、財務・法

顧問として上原酒造を見守る上原長榮さん

務調査などいくつもの専門的な手続きを経て、3年がかりで最終契約に至った。

 上原さんは「結局は社長が数々の判断を下さなくてはいけないが、専門家に相談できる体制があったので、落ち着いて覚悟を決められた」と説明した。

 南都は、自前の観光施設での販売のほか、土産品への卸事業を通して、県内外に泡盛の良さを発信していく考えだ。上原酒造の顧問に就き、アドバイスをしている上原さんは「事業承継ができて本当によかった。悩んだり、あきらめかけたりしている経営者もいると思うが、まずは専門家に相談してみては」と話した。

費用を支援、「まずは気軽に相談を」

 沖縄県産業振興公社では、事業継続と雇用維持、技術を継承することで、持続的な県経済の活性化を図るため、8月16から「沖縄県事業承継推進事業」の公募を実施している。

 同事業を運営する事業支援課の當眞嗣清(とうましせい)サブマネージャーは「先の事例のようにどのように取り組んだらいいのか悩む経営者からの相談が増えています。大切な会社を繋ぐためのお手伝いを致しますので、まずはご相談ください。」と呼びかけた。

 補助金は、承継する企業価値の算定や、財産承継モデルケースの策定等、外部専門家へ業務委託する際の費用。また親族や従業員の後継者が不在の場合、M&A仲介業者へ依頼して、後継者を見つけるための着手金や、マッチングサイトへの登録料等に活用できる。

 補助金に関する問い合わせは、同公社事業支援課、電話098(859)6236

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