[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](315)

 がん治療における化学療法(抗がん剤治療)はがん細胞をたたく半面、正常な細胞にまで影響(有害事象)を及ぼします。お口の中の有害事象として口腔(こうくう)粘膜炎(口内炎)があります。一般的な化学療法では約40%の方にみられることが報告されています。口腔粘膜炎が重症化すると患者さんのQOL(生活の質)を低下させるだけではなく、予定されている治療計画の変更や、治療の中断をせざるを得ない事態を招きます。

 抗がん剤によるお口の中の変化は投与開始後4~5日で粘膜の腫れぼったさやヒリヒリとした違和感を認め、その後赤く腫れ、一部が剥がれ傷を作ります。この頃から食事が取りづらくなり、唾液の分泌障害による乾燥状態も加わり、2週間ごろに症状が最も強くなります。

 3週間が経過するころには障害を受けた粘膜が再生され痛みが軽快します。現在のところ口腔粘膜炎の発症を完全に防ぐことは困難です。しかし、歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアと患者さんご自身によるセルフケアを行うことは重症化を防ぎ予定された治療を完遂する上で、重要であることが示されています。

 厚生労働省はこのようながん治療における口腔管理の必要性を認め2012年よりがん患者の口腔ケア医科歯科連携が保険収載されました。さらに18年よりがん治療の主治医との連携の下で口腔粘膜保護剤の使用が保険収載されました。本剤は薬効成分を含まない液体成分でお口の中の水分と反応して保護膜を形成し、疼痛(とうつう)を和らげる材料です。食事に支障を来す疼痛に対して極めて有効であると考えています。

 がん治療の予定が決まりましたらかかりつけ歯科医またはがん診療連携登録歯科医(日本歯科医師会が主催する「全国共通がん医科歯科連携講習会」を修了し、がん患者さんへのお口のケアや歯科治療についての知識を習得した歯科医師)にご相談ください。

(金城尚典 歯科口腔外科クリニック=名護市