「無駄な負けなど一つとしてありません」。引退する将棋の現役最年長棋士、加藤一二三(ひふみ)九段(77)の言葉。14歳で棋士となり「天才」といわれたが、負けても努力し続け次の勝利を目指した

▼プロ棋士らの団体、日本将棋連盟が揺れている。三浦弘行九段のコンピューターソフト不正使用疑惑で、対応に不備があったと谷川浩司会長が辞任することになった。当初、三浦九段から聞き取りした上で出場停止処分にしたが、第三者調査委員会は「不正なし」と結論づけていた

▼確証もないのに三浦九段を処分した連盟の詰めの甘さが露呈した。三浦九段の名誉回復などは来月の新体制に引き継がれるが、後味の悪さが残る

▼コンピューターは飛躍的に発展し、今やトップ棋士をもしのぐ存在だとされる。県内でアマ四段の友人は「特に終盤、人間は読み違えやすいが、コンピューターは間違えない」と話し、瞬時に計算できるコンピューターの方が勝るという

▼コンピューターと対戦した場合、どんな対策を取るか問われた加藤九段は「コンピューターは熱に弱いからストーブを当てる」と冗談を飛ばして笑いを誘ったことも

▼コンピューターには、計算やスピードではかなわないかもしれないが、負けから学んだ加藤九段のように、独特の発想の一手でファンをうならせてほしい。(玉寄興也)