文部科学省は、10年の期限を設けている教員免許の更新制を、早ければ2023年度から廃止する。09年度の導入時から批判が相次いでおり、遅きに失した感は否めない。

 免許の更新に伴い、教員は30時間以上の講習を大学などで受ける必要がある。受講の負担による多忙化や、教育現場の人材不足につながるとの指摘が絶えなかった。

 教員が産休や育休に入る際、学校側が代わりを探しても免許の失効で採用できないなどの弊害も、人材難の一因になっている。

 教員には、講習への懐疑的な見方も強い。約3~4万円の受講料は自己負担。希望できる科目を受けられなかったり、講師側の技量にばらつきがあったりして「自腹で参加する価値を感じない」(県内教員)との不満がある。

 教員には勤務年数に応じた「経年研修」などで、最新の教育事情を学ぶ機会もある。屋上屋を架すような複数の講習が、現場に負担を強いていないだろうか。

 制度は07年、第1次安倍晋三政権の教育再生会議が提言した。第一次報告には「不適格教員の排除」が盛り込まれており、教員の資質向上を掲げた当初の趣旨から逸脱していた。

 政治主導の教育政策では、政府が大学入試改革の目玉と位置づけた、英語民間検定試験と記述式問題の導入も、有識者会議が困難と結論付けた。大学や受験生など現場の意見に耳を傾けず、強引に推し進めた制度が頓挫する構図が今回と共通しており、政治の責任は重い。

■    ■

 日本の教員は「世界一多忙」というデータがある。

 経済協力開発機構(OECD)の18年調査で、日本の中学校教員の仕事時間は週56・0時間。13年の調査を2・1時間上回り、2回連続で世界最長だった。部活動の指導や事務業務の長さが目立つ。

 小学校教員の仕事時間も、最長の週54・4時間だった。

 一方で、教員の力を高めるための「職能開発活動」は最短の0・6時間(平均2・0時間)で、文科省は多忙が要因とみている。

 県内でも18年度、県立校の勤務実態調査で、残業時間が月100時間を超えた人数が延べ1314人に上った。月80時間が目安とされる「過労死ライン」を超える長時間労働が常態化している。

 コロナ禍ではインターネットを使った非対面の授業や、学校PCR検査への対応など新たな業務が加わり、教育現場への負担が増している。

■    ■

 免許更新の廃止後も、教員が資質を高める努力は重要だ。近年はリモート授業への対応や、子どもの心理を把握するメンタルケアなど、広範な知識が求められる。

 多忙が常態化すると研修への出席が同僚の業務負担に直結し、当事者は後ろめたさを抱える。国と教育委員会は、教員が学びに打ち込める環境整備へ知恵を絞ってほしい。

 義務的な研修だけでなく、教師が継続的に学んで理解を深めたい多様なメニューの提供など、教職に誇りとやりがいを持てるサポートに力を入れる必要がある。

2021・8・26 沖縄タイムス