【連載「働く」を考える】
「東京と沖縄でやっている仕事は一緒なのに、なんでこんなに給料が違うんだ」
約5年前、離婚してシングルファーザーとなり、両親の故郷である沖縄に移住した電気工事士の比嘉昌史さん(41)は驚きを隠せなかった。
千葉県で生まれ育ち、東京の電気工事会社で6年働いた。仕事量は多く、残業は日常茶飯事だったが、給料は手取り平均30万円、残業が多いときは40万円あった。
沖縄で最初に入った電気工事会社では、手取り20万円はもらえる約束だったが、3カ月の試用期間後、16万円しか出せないと言われた。東京時代の半分で、「これでは生活できない」と入社を断った。
比嘉さんは現在、個人事業主として、2人の職人を使って、電気工事を請け負っている。仕事の依頼は順調に入り、息子と2人、不自由なく生活できる収入を得ている。
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比嘉さんが痛感するのが沖縄の人件費の安さだ。電気工事の職人1人当たりの日当の相場は東京が2万円、沖縄は1万2千円。月にすると20万円の差が出ることになる。1万2千円は比嘉さんが見習い時代に得た日当と同じ額だ。
比嘉さんが持っている1級電気工事施行管理技士の資格手当は東京では5万円が相場だったが、沖縄では1万円そこそこ。
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賃金の低さは、沖縄の労働者の仕事へのモチベーションを下げ、生産性低下の悪循環を生んでいるように見える。
例えば、沖縄の職人は仕事のスピードが遅いと感じる。「安い賃金に慣れて、そういう仕事の仕方になっているのではないか」と思う。
仕事で付き合いのあった会社は、職人を社員として雇用していたが、給与が12万円ほどと安く、社員は残業代を稼ぐために、無駄と思える仕事を夜遅くまでしていた。特に若い人がこうした仕事のやり方についていけないようだった。その会社では1年に30人が辞めていった。
会社の給料では安く、一人親方(建設業の個人事業主)になる職人も沖縄には多い。
「経営者が利益を取りすぎている会社が多いのではないか。もっと労働者に還元するべきだ。がんばった分給料が上がれば、仕事に魅力を感じ、会社に残る。人が定着する会社は成功する」と比嘉さん。
さらに、建設業全体の人件費の底上げが必要だとし、「作業員の日当をせめて1万5千円に上げるべきだ」と訴えた。(文中仮名)(学芸部・高崎園子)
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