生まれつき脳や神経に障がいがあり、たんの吸引や人工呼吸器を日常的に必要とする「医療ケア児」の仲村夢杏(ゆあん)ちゃん(4)=沖縄県宜野湾市=の父、翔さん(38)は8月24日、保育士を目指す沖縄女子短期大学児童教育学科の2年生約120人にオンラインで講演した。翔さんは、医療技術の進歩に伴って助かる命が増え、医療ケア児も増えていると説明。「同世代の子たちとの関わりをつくってあげたい」と保育園に通わせた経緯に触れ、「医療ケア児について知っていれば万一の時も落ち着いて対応できる。まずは知って」と呼び掛けた。

「親がいなくなっても夢杏が生きていけるように」と望む仲村翔さん(右)=8月24日、与那原町・沖縄女子短期大学

「環境整備が大切」と話すNPO法人県自立生活センター・イルカのスタッフ、早坂佳之さん

「親がいなくなっても夢杏が生きていけるように」と望む仲村翔さん(右)=8月24日、与那原町・沖縄女子短期大学 「環境整備が大切」と話すNPO法人県自立生活センター・イルカのスタッフ、早坂佳之さん

 厚労省の推計では、医療ケア児は2019年度で全国約2万人。夢杏ちゃんは先天性の疾患のほか、下半身まひや排尿排せつ障害の合併症があり、たんの吸引や酸素投与が要る。生後当初は「首も据わらないだろう」と診断されたが、現在は自身で車いすをこぐ。翔さんは「夢杏に出会って、できないことを数えるよりもできることを増やしていきたいと思うようになった」と語った。

 NPO法人県自立生活センター・イルカの勧めで認可保育園に入ると、「あれ取って」「これは嫌」などの自己主張が出始め、同世代の子のまねをするようになったという。医療ケア児の入所は市内で初。翔さんは「クリスマス会や運動会。そういう普通の行事をほかの子と同じように体験させてあげることができた」と喜びを振り返った。

 現在、夢杏ちゃんは同市内の公立幼稚園に通う。看護師付き添いの下、先生が主体性を引き出す工夫を重ねてくれているのが何よりうれしいという。

 6月に成立した「医療的ケア児支援法」は、保育所や学校の設置者に対し、ケア児支援の責務をうたっている。翔さんは「親の私たちも、先生たちに任せきりにせず、自分の子どもの病気について学び続けないといけない」とした上で、「医療ケア児は少しの体調不良でも休ませる場合が多く、救急車の要請は意外と少ない。緊急時の知識と技術を身に付け、落ち着いて対応できる保育士になってほしいです」と理解を求めた。

 講演会には県自立生活センター・イルカの早坂佳之さんも参加。断崖絶壁を前にすれば車いすの人もそうでない人も登れないと話し、「壁を取り払うこと、環境整備を進めることが社会の目指すべき方向性です」と訴えた。

 講演は、保育園などでの実習期間がコロナで一部短縮となったことを受け、同大の羽地知香助教授らが企画した。