番組の内容には真実性が認められず、原告の社会的評価を低下させた。判決はこう指摘し、番組制作会社の責任を厳しく断じた。

 沖縄の米軍基地反対運動を取り上げたテレビ番組で名誉を傷つけられたとして、市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんが制作会社DHCテレビジョン(東京)などに損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は名誉毀(き)損(そん)があったと認め、同社に550万円の支払いを命じた。

 問題となったのは2017年1月に東京MXテレビで放送された番組「ニュース女子」。東村高江の米軍ヘリパッド建設への抗議行動を題材にした。

 番組は、現場では暴力や犯罪行為が横行しているとし、辛さんがそれをあおり、経済的に支援しているかのように伝えていた。

 「反対の人達は雇われている」「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」などとテロップでつなぎ、辛さんとの関連を印象づける一方的な内容だ。

 判決は、辛さんが志向しているのは「非暴力による抵抗運動」と指摘し、番組が裏付け取材をしていないとも認定した。

 放送以降、辛さんは激しい誹(ひ)謗(ぼう)中傷を受けた。身を守るために一時は海外に生活の拠点を移さざるを得ない状況に追い込まれたほどだ。人権侵害は明らかである。

 判決はDHC側にインターネットでの謝罪文の掲載も命じた。高額の賠償命令とともに裁判所の厳しい認識がうかがえる。

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 一方で動画公開を差し止める請求は認められなかった。

 判決は、損害賠償や謝罪文掲載により「相当程度の被害回復を図ることが可能」などと指摘している。

 番組はネットで見ることができる。今でも拡散していることを思えば、なぜ認められなかったのか疑問を感じる。

 地上波放送時には、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が倫理違反を、放送人権委員会が名誉毀損を認定した。

 このまま公開が続くのであれば名誉回復は困難になる。動画公開を止めるべきだ。

 辛さんは判決後の会見で「私を使って沖縄の平和運動を愚(ぐ)弄(ろう)する、最も悪質なフェイクニュース」と語った。

 そもそも番組は、沖縄の人々がなぜ基地に抗議するのかという視点が欠けている。

 在日コリアン3世である辛さんを通し、事実を曲げてまで沖縄の反基地運動を誹謗するのは、在日ヘイトと沖縄ヘイトが合わさった深刻な憎悪である。

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 DHCテレビジョン側は判決後、同社ネット番組で「不当判決」と主張し、控訴の構えを見せる。

 化粧品会社ディーエイチシーは会長名で在日コリアンを差別する内容の文章をウェブサイトに掲載していた。批判を浴び削除したが、差別的な言動は看過できない。

 差別を許さない社会をつくる、という決意を市民や企業、行政などがこれまで以上に強い形で毅(き)然(ぜん)と示す必要がある。