道路に手書きされた「止マレ」の文字。小さな交差点で信号はない。横切る車は来ないか。停車してのぞき込むとその道にも「止マレ」と書いてある。なんと、交差点に入る4本の道全てが「止マレ」
▼名護市仲尾次の集落内は一風変わっている。同じような細い道が多いからか、優先道路の車は止まらなくてもいいという発想自体がなさそうだ
▼「止マレ」の道路標示は地元の交通安全友の会が40年近く前に始め、集落内に120カ所書いた。近くの集落にも広がり、「とまれ」「STOP」といろいろな書き方がある
▼それにしても、車同士で鉢合わせしたら、まごまごしそうだ。どっちが先に行けばいいのだろう。地元の人に聞くと、旧国道58号につながる道が優先という暗黙の了解があるらしい。よそ者には全貌が分からないが、そこはあうんの呼吸か
▼「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とは少し意味合いが違う。確かにみんなだと心理的な抵抗は減るかもしれない。本当は車が突っ込んで来るリスクは変わらない。大切な判断を丸ごと人に委ねてしまう危うさ
▼人生の旅路には、たくさんの交差点がある。人と出くわしたら優先順位を競うのではなく、譲り合いで。進む時は、自分自身で責任を持って判断して。旅路のどこか終着点近くでは、そういう者に、私もなりたい。(阿部岳)