銀髪の時代 「老い」を生きる

若き日の話に花咲かす 介護事業所が生活の中心【銀髪の時代】

2017年2月10日 18:05

【連載・銀髪の時代 「老い」を生きる】

収穫したニラの根を処理する知花キヨさん(左)=1月6日、沖縄市

 沖縄市の小規模多機能型居宅介護事業所「きづきの家」に隣接した菜園。ムーチービーサにはほど遠い、汗ばむ陽気に包まれた1月6日午前中、利用者の知花キヨさん(87)は地べたに腰を下ろし、スタッフが収穫したニラの根をはさみで切りそろえていた。

 「自分たちは篤農家。野菜から花から何でも作った。サトウキビも相当の量。女であれだけつくる人間はなかなかいない。動物もたくさん飼っていたんだから」。認知症と診断され約7年。口数は減ってきても、農業や子育てに奔走した若い日の思い出になると話は別だ。

 キヨさんは北大東島で生まれ、両親の出身地・大宜味村の山中で沖縄戦を体験した。戦後は北大東へ戻り、村長を通算7期務めた夫の俊夫さんを支え5女に恵まれた。製糖期には、自宅そばの長屋に寝泊まりする、本土や外国の援農者の世話で大忙し。県知事ら視察団が島を訪れた時は、手料理で大宴会を盛り上げた。四女の新川美津留さん(50)の記憶に残る当時の母は「勝ち気で要領が良く、生きる力があった」。

 菜園での作業が30分ほど過ぎたころ。ぽつぽつと雨が落ちてきたが、手元に夢中のキヨさんはスタッフの心配も意に介さない。本降りになってようやく立ち上がると、助けも借りず足早に屋内へ向かった。「キヨさんはあまりお風呂に入りたがらないので、午前中は1時間くらい体を動かしてもらい『汗を流そうね』とお風呂場へ誘導します」。施設管理者の與那嶺清美さん(52)は、ちょっとした“作戦”を明かす。

 「きづき」は通所を核に訪問や宿泊のサービスを組み合わせ、利用者の在宅生活を支援する。63~102歳の登録者17人は1人を除いて認知症。キヨさんは沖縄市の美津留さん宅で孫の翔也さん(23)と3人で暮らしながら、平日の昼間は「きづき」のデイサービスに通い、週2日宿泊する。

 利用してまもなく2年。すっかり生活の中心となった「きづき」をキヨさんは「学校」と呼ぶ。「今年はキヨさんの指導でムーチーを作ったんですよ。若いスタッフには特に厳しくて」。與那嶺さんが話すように、季節の行事でリーダーシップも発揮している。

 症状は少しずつ進んでいるが、要介護度はこの2年、変わらず「2」。「一時はどうなることかと思っていたけれど、『きづき』のおかげで、仕事や好きなことに打ち込みながら母を見守ることができる」。発症後もしばらく独居していたキヨさんとの「綱渡りの日々」を思い返しながら、美津留さんはしみじみと感謝の言葉を連ねた。(「銀髪の時代」取材班・新垣綾子)

認知症の私は「記憶より記録」
大城勝史
沖縄タイムス社
売り上げランキング: 158,134
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
注目トピックス
高校野球
高校野球
第101回全国高等学校野球選手権沖縄大会(6月22日~)の全試合をイニング速報します。
大久保寛司が語る人と経営みらい塾
大久保寛司が語る人と経営みらい塾
お陰様で11周年目を迎えます。 今年も受講生が期待できるテーマを準備して引き続き開催致します。
食の多様性で観光立県 県内の取り組みをご紹介!
食の多様性で観光立県 県内の取り組みをご紹介!
国際観光都市を目指す沖縄。食の多様性への対応が求められています。その最前線を取材!
LINE@公式アカウント紹介企画
LINE@公式アカウント紹介企画
企業や団体の「LINE@」を紹介! 友だち追加でお得な情報やクーポンをゲットしよう!!
しまくとぅば広告
しまくとぅば広告
消滅の危機にある「しまくとぅば」をもっと使おう!
週刊沖縄空手が読み放題
週刊沖縄空手が読み放題
空手発祥の地・沖縄から毎週発信! 電子版で「週刊沖縄空手」が世界のどこでも読めます。
今日もがっつり!運転手メシ
今日もがっつり!運転手メシ
沖縄タイムスの運転手がつづるグルメブログ。「安い」「おいしい」「腹いっぱい」の食堂や総菜屋さんを紹介します。
マンガ家大城さとしが行く!沖縄のじょ~と~企業探訪
マンガ家大城さとしが行く!沖縄のじょ~と~企業探訪
おばあタイムスでおなじみのマンガ家・大城さとしさんが長編マンガで沖縄の企業を紹介するシリーズ企画です。
命ぐすい 耳ぐすい
命ぐすい 耳ぐすい
沖縄県医師会の各分野の医師による医療・健康に関するコラム
アクロス沖縄
アクロス沖縄
東京発 各分野で活躍する情熱県人らを紹介
ワールド通信員ネット
ワールド通信員ネット
世界各国の沖縄県系人の話題を中心に、海外通信員が各地のニュースをお届けします