自民党総裁選が告示され、河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が立候補を届け出た。4氏が争う構図が確定した。

 事実上、退陣の意向を表明した菅義偉首相の後継者となる次の首相を決める選挙である。

 「安倍-菅政治」をどう評価し、どう違いを出していくかが問われる総裁選だ。特に直視しなければならないのはその「負の遺産」である。これまでの「説明しない政治」を見直さなければならない。

 安倍晋三前政権とそれを引き継いだ菅政権の合わせて9年近く、自民党では「政治とカネ」を巡る不祥事が相次いだ。

 安倍政権下での森友学園を巡る公文書改ざんや桜を見る会などの問題は「権力の私物化」が指摘された。

 菅政権はこれらの疑惑の解明に後ろ向きで、日本学術会議の会員任命拒否問題などでも説明責任を軽視した。新型コロナウイルス対策も迷走し続け批判を浴びた。

 国民の政治への不信は高まっている。総裁選は自浄能力を発揮できるまたとない機会である。

 立候補後の記者会見では、森友文書改ざん問題の再調査を問われたが、再調査を明言したのは野田氏のみ。他の3氏は否定的な見解を示した。それぞれ安倍前首相への配慮も見え隠れする。

 国のリーダーを志す政治家が「負の遺産」に向き合えずして、信頼回復は果たせるのだろうか。

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 4候補のうち3氏は沖縄担当相を経験した。野田氏も郵政相時代に沖縄政策に携わった。

 沖縄の基地問題に対しては、4候補とも現在の「辺野古移設が唯一の解決策」を踏襲する可能性が高い。

 ただ、忘れてはならないのは、安倍前首相が2013年12月、仲井真弘多元知事に米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」を約束したことだ。しかし日米が真剣に交渉を重ねた形跡はなく時間だけが経過した。

 軟弱地盤の改良工事が必要になり、工期も事業費も大きく膨らんでいるにもかかわらず政府は現在、新基地建設を強行している。

 この問題はそもそも普天間の危険性除去が出発点だ。辺野古ばかりに目を向け、基地負担の軽減につながるとは思えない新基地計画に固執するのは思考停止に陥っていると言うほかない。

 いつどのように普天間を返還するのか、負担軽減を図るのかを4氏は語るべきだ。

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 今回の総裁選は岸田派を除く6派閥が事実上の自主投票の方向だ。1回目の投票で過半数の票が得られなかった場合の決選投票も見据え、票の争奪が激化している。

 間近に迫った衆院選の「顔」を選ぶ投票になる懸念も拭えず、冷ややかに見ている国民は少なくない。

 「身内の選挙」である総裁選によって政治的空白を生じさせるようなことがあってはならない。コロナ対策を前進させるためにも野党が求める臨時国会の召集に応じるべきだ。