報道の在り方について識者らに意見を聞き、紙面の質の向上につなげる「沖縄タイムスと読者委員会」の第19回会合が15日、オンライン形式で開かれた。委員の阿部藹(あい)氏(IAm共同代表理事)、榎森耕助氏(お笑い芸人)、我部政明氏(沖縄対外問題研究会代表)の各氏が、東京五輪・パラリンピック報道やコロナ報道をテーマに、本紙報道について意見交換した。自由討論では「ヤングケアラー」当事者の声に耳を傾けた連載への評価もあった。

東京五輪、パラリンピックの報道についてオンラインで意見を交わす(上段左から)我部政明氏、阿部藹氏、(下段左から)榎森耕助氏、我喜屋あかね運動部記者=15日

出席者

▶阿部藹氏(IAm共同代表理事)

▶榎森耕助氏(お笑い芸人)

▶我部政明氏(沖縄対外問題研究会代表)


 与那嶺一枝編集局長 コロナ禍の東京五輪・パラリンピックは、どう報道すべきか悩んだ。開会式などのセレモニーは華美にならず、大会を巡る多様な意見を紙面に反映させ、地元選手の活躍を中心に紙面づくりをした。委員の意見を伺いたい。

阿部委員 「負の側面を沖縄からどう考えるべきかが必要」

 阿部藹委員 二つの立場から伝えたということだったが、読者として純粋に読んでいると、そのスタンスは紙面から伝わってこなかった。五輪開催は延期またはキャンセルすべきだったという意見を持っているので、複雑な気持ちで見ていた。

 8月2日付の「大弦小弦」で、五輪後にこの経験をどう捉えるかが非常に大事ということが書かれていて、正しい指摘だと思った。今回の五輪は、男女平等が名ばかりであることや、多様性が理解されていないなど、多くの日本の負の側面が明らかになった。その問題を沖縄からどう考えるべきかが必要な視点だと思う。

 県紙なので沖縄にゆかりのある選手を報じるのは当然だと思うが、そこだけに偏るのではなく、さまざまなバックグラウンドがある選手を伝えると視野が広がったのではないか。

榎森委員 「『第5波』にメディアが加担した」

 榎森耕助委員 東京五輪が緊急事態宣言中に行われて、時を同じくして日本中で新型コロナウイルスの感染爆発が起きた。日本全体がお祭りムードで五輪一色になってしまったのは、やはりメディアがそう報道したからだ。コロナの「第5波」にメディアが加担した側面はあると感じる。沖縄タイムスも五輪が盛り上がるような紙面だった。

 五輪憲章には、国家間競争になってはいけないので、メダル獲得数を載せてはいけないというルールがあると思うが、一体なぜ紙面に載せているのか疑問に感じた。選手の活躍はたくさん載っていたが、終わった後に振り返りで検証する報道が必要だったと思う。

我部委員 「葛藤や議論を展開するのも検証の一つ」

 我部政明委員 五輪報道に関する社内の葛藤や議論を紙面で展開するのも検証の一つになるのではないか。社説では8月9日付で、選手の活躍と大会そのものの評価を厳密に分けるべきだとしているが、理由が示されていない。

 9月6日付の社説は、パラリンピックを称賛する論調で、挑戦する人の強さを褒めたたえている。なぜ障がい者の場合には限界に挑み続けることが称賛されるのか。大会が障がい者を理解する機会とあるが、頑張れない人への圧力や頑張ることの強制をしないような、普通の社会の一員として暮らせることの大事さも、パラリンピック報道と共に必要な視点だったのではないか。

 宮城栄作編集局次長 局内で議論を重ね、これまでの五輪報道の中ではある程度、抑制的だったというのがわれわれの印象。県勢の活躍は地元紙として報道しようという思いで、開催が危ぶまれる中、記者は沖縄から根気強く取材してきた。ただ、感染爆発が続く状況で医療従事者らのことを考えると、報道が違う景色で映ったかもしれない。十分にスタンスが伝えられなかったと感じた。

 磯野直運動部長 五輪に向けて2年前から準備を進めてきた。反対意見も強いと分かった上で、運動部として何ができるかを考え、県関係選手に寄り添うことを徹底してきた。開催自体がどうなるかという中で、苦悩を抱える選手も多かった。日々の紙面づくりでは五輪一色にならないよう議論を重ね、書き手や原稿をチェックする側は、言葉の使い方も意識した。

 我喜屋あかね運動部記者 少しでも沖縄のアスリートを取り上げたいという判断は間違っていなかったと思う。ただ、自分自身もどう報道すべきか葛藤があった。検証が足りなかった点は考えていきたい。

 森田美奈子論説委員長 五輪のためにコロナ対策が犠牲になるようなことがあってはならないということで、開幕前には何度も指摘し、慎重姿勢を示してきた。ただ、大会では純粋に心動かされる場面もあり、選手の頑張りについては評価したいという立場だった。

 与那嶺局長 五輪についてさまざまな問題が噴出した。コロナ禍の開催で感染拡大につながるのではという懸念と、4年に1度のアスリートの活躍を楽しみにしている一般読者のニーズにどう応えるかということを社内で議論を重ねた。引き続き議論していきたい。メダル獲得表については宿題としたい。