「クーブイリチー(昆布の炒め物)ちょうだい」「おにぎりとダイコンのウッチン漬けあるねえ?」-。沖縄市住吉の青果物卸売り市場中部農連市場内にある総菜店「いろは食品」は、午前4時ごろから6時ごろまで買い物客でにぎわいを見せる。

トーカチを迎えてますます元気な伊禮誠さん、春子さん夫婦と娘の久高陽さん(左)=沖縄市住吉・中部農連市場

 同店を切り盛りするのは今年数え88歳のトーカチを迎える伊禮誠さん(87)と妻の春子さん(82)。市場内の業者から「気持ちのこもった総菜は味も最高。朝の元気の源」と評判で「誠さんは今年トーカチを迎えるが元気印。いつまでも現役で店を続けてほしい」とエールが送られている。

 伊禮さんが総菜店を始めたのは1988年。それまでは沖縄そばの麺を仕入れしそば屋へ配達する仕事をしていた。市場内に店舗が空いたため料理上手だった春子さんが総菜店をオープン、誠さんも手伝うようになったという。

 店名について誠さんは「私の小学時代は『あいうえお』ではなく『いろはにほへと』。その方が覚えやすいかな、という単純な理由です」とユーモアたっぷりに話す。

 誠さんと春子さんの朝は早い。午前3時ごろには調理したての総菜が並ぶ。店の営業は午後1~2時ごろまでで、店を閉めた後に睡眠を取ってから、仕込みと調理の支度に入るという。

 お店の計算係は春子さんの役割。電卓はあるがほとんど使わず暗算でこなし、客は「寸分の間違いもない」と太鼓判を押す。「電卓を使うより暗算が早いからね」と春子さん。朝の活気が過ぎ、客足が落ち着いた午前10時ごろから、もやしのひげ取りに専念する時間となる。

 夫妻の人柄と味が人気を呼びお店は盛況だったが、時代が進むにつれ、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで手軽に総菜が買えるようになり、客足は次第に減ってきたという。かつて市場内や周辺にあった多くの飲食店や乾物屋、仲卸業では客らの声が飛び交っていたが、今では以前の活気もなくなり誠さんは「時代の流れで仕方がないね」と少し寂しげな表情も浮かべる。

 そんな両親がいつまでも元気で長生きしてほしいと、店を手伝う四女の久高陽(ひなた)さんは「市場内の飲食店は5店舗に減ってしまい寂しいが、楽しみながら店を営み、元気で長生きしてほしい」と話していた。(翁長良勝通信員)