沖縄県金武町が昨年6月から今年1月にかけての調査で地下水源などから国の暫定指針値・目標値(1リットル当たり50ナノグラム)を超える有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)とPFOA(ピーホア)を含むPFAS(ピーファス)を検出した問題で、環境団体らは有害物質の影響を懸念。国内では残留性が高いPFASに対する健康調査の制度はなく、「日本政府が継続的な調査をするべきだ」と訴える。一方で町は調査結果を1年3カ月にわたり公表せず、町民からは批判の声が上がる。(社会部・砂川孫優、北部報道部・国吉聡志)

2019年12月の調査以降、取水を止めている金武町が管理する「5号水源」=9月17日、同町金武

有機フッ素化合物の検出地点

2019年12月の調査以降、取水を止めている金武町が管理する「5号水源」=9月17日、同町金武 有機フッ素化合物の検出地点

公表しなかった訳

 町は、2020年6月の調査で飲料水用の地下水源6カ所のうち、3カ所でPFOSとPFOAの合計値が暫定指針値を上回ったと明らかにした。最大値は暫定指針値の8・2倍に上る410ナノグラムだった。

 このうち、2カ所からの取水を停止。昨年6月の調査で87ナノグラムを検出した残る1カ所は、企業局が管理する水と混合して50ナノグラム以下とするが、供給を継続。

 町は、取水を停止した水源について「検査以前から暫定指針値以下にしていた」と説明する。だが、調査開始以前から地下水源が長期的に汚染されていた可能性は否定できない。

 調査結果を公表しなかったことに町は「住民が水道水を飲まなくなるなどの懸念もあった」と弁明する。

地下水利用の歴史

 町金武や並里区では、地下水が長く生活用水として利用されてきた歴史がある。町上下水道課によると、町内の水道水源は現在、県企業局から約65%、地下水約35%の割合で賄っている。将来的に町は地下水からの取水をやめ、全ての水道水を企業局の水で賄う考えだが、見通しは立っていない。

 金武町に住む30代女性は「住民の健康被害は大きな問題。町民へ説明してほしい」と対応を批判。60代男性は「町の調査は納税者の町民に知らせるべきだ。町の対策も含めてデータを公表してほしい」と訴えた。

体内残留の可能性

 県内でPFAS汚染などを調査している環境団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」(IPP、河村雅美代表)は、米軍が1970年代からPFASを含む泡消火剤を使用し、何らかの要因で漏れ出た有害物質が飲料水を通して県民の体内に残留している可能性を懸念する。

 河村代表は、県と基地に隣接する自治体の合同調査で汚染源を早期に特定する必要性を示し、「県民の体内汚染度も緊急的に調べるべきだ」と話した。

健康調査まだ手付かず

自然界で分解困難

 有機フッ素化合物は自然界でほぼ分解されず、人の体内や環境中に長く残ることから「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれる。昨年5月までに環境省と厚労省は、河川や地下水の暫定指針値・目標値を設定したが、健康調査は手付かずだ。

 京都大は2019年、米軍普天間飛行場周辺の湧き水などで高濃度のPFASが検出されたことを受け、宜野湾市の一部住民を対象に血中濃度調査を実施。

 体内から有害物質のPFHxS(ピーエフへクスエス)が、全国平均の約53倍、PFOSは約4倍の高濃度で検出。水道水の利用者に物質の血中濃度が高いことが判明している。

 金武町は地下水源からPFAS含有水の検出を受けて、「健康被害の調査は科学的な根拠が整理されていない」と述べるにとどめた。

 PFAS汚染問題の全国的な関心の高まりを受けて、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議(東京都)は、国へ有害物質が体内に残る基準値と疫学調査などを定めた環境安全基本法(仮称)の制定を求めている。会議に呼応して県内で署名活動を呼び掛けているIPPの河村雅美代表は「自治体は短期的に緊急検査、国は長期的に継続して包括的な検査を講じる必要がある」と指摘する。

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