2017年から国が定めたガイドラインに基づき、北海道大、札幌医大など全国12大学に保管されていた遺骨はようやくアイヌの人々やアイヌのコミュニティーに返還されることになった。しかし、和人文化に基づいた法律に沿って祭祀(さいし)継承者であることが特定されなければ個人返還ができないなど、多く問題が残されている。17年には、京都大学所蔵の琉球人遺骨返還運動・訴訟も始まった。これに対して、日本人類学会は琉球人遺骨を「国民共有の文化財産」だとし、今後も研究資料として利用できるよう京大に要望書を提出した。現在、琉球人遺骨返還運動グループは台湾大学から返還された百按司墓から盗まれた遺骨を研究対象として保管している沖縄県教育委員会に対しても返還要求を続けている。
約50年前の1972年に、アイヌ側は、札幌医科大学で開催された第26回日本人類学会・日本民族学会連合大会において、和人研究者の「同化」と「アイヌ民族は滅亡した」という認識上での研究、アイヌを研究と解剖の客体として位置づけてきたことを糾弾した。89年になって、日本民族学会理事会は「相互の十分な意思疎通を実現し得る研究体制の確立」「アイヌ出自の専門研究者の育成とその参加による共同研究の必要性」を述べたアイヌ研究の見解を発表したが、そこで示された見解は実現されたとは言い難い。
人権侵害を認識
1970年代にはアメリカ合衆国でも先住民の遺骨が「白人」の遺骨とは異なる扱いを受けること自体が先住民に対する人権侵害であると、遺骨返還運動が始まった。...