被害者の声に耳を傾け、「魂の殺人」といわれる被害実態に即した刑法に改正するべきだ。

 上川陽子法相が性犯罪の処罰範囲を拡大するかについての検討を、法制審議会(法制審)に諮問した。性犯罪は2017年の刑法改正で厳罰化されたが十分とはいえない。改正後も無罪判決が続き、被害者団体から批判の声が上がっている。

 最大の焦点になっているのが強制性交罪の「暴行・脅迫要件」をどう改正するかだ。 現行法では、暴行や脅迫があったことを立証できないと、強制性交罪にならない。しかし、暴行や脅迫がなくても、恐怖や精神的ショックで抵抗できずに、被害に遭う例は多い。

 法制審に先立って開かれた法務省の検討会では「処罰の範囲が不明確になり冤罪(えんざい)が生まれる」と慎重意見が出て、まとまらなかった。報告書は両論併記の形となり、議論は法制審に持ち越された。

 「公訴時効の期間」も法改正の論点の一つだ。

 子どもへの性犯罪は、そのとき何をされたか分からず、何年も後になって認識することが少なくない。訴え出るまでに長い時間を要するケースもある。強制性交罪の公訴時効は10年で、被害を訴える際の障壁になっている。

 性交に同意する能力があると見なす「性交同意年齢」の引き上げも議論の対象だ。現行法は「13歳」で欧米各国に比べ低い。適切に判断できる年齢をしっかりと議論するべきだ。

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 性暴力や性犯罪の相談件数が増加している。

 全国のワンストップ支援センターに寄せられた2020年度の相談件数は前年度比23・6%増の5万1141件。新型コロナウイルスの影響で在宅時間が長くなり、同居人などによる性暴力の相談が増えている。

 県内でも、性暴力被害の相談件数が増加している。

 県性暴力被害者ワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は20年度2835件で、開設した15年度からの6年間で6倍超に増えた。

 相談を受けた被害者は20歳未満が35%を占めた。

 本紙が6月に連載した「告発 子どもへの性暴力」では被害に遭った2人が体験を語っている。

 命の危険を感じるほどの恐怖、心に深く刻まれたトラウマ、告発への高いハードル、刑の軽さへの失望。被害者が語る実態は苛烈だ。

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 性犯罪の無罪判決が相次いだことをきっかけに、花を手に性暴力の根絶を訴える「フラワーデモ」が全国に広がった。デモには、偏見や二次被害を恐れて沈黙してきた被害者が参加し、怒りや苦しみの声を上げた。

 シンボルである花は、被害を訴える人に「あなたの話を聞く」という気持ちを表している。

 法制審の部会には被害当事者が委員として加わるという。当事者や支援者は暴行・脅迫要件の撤廃を求めている。被害者の声を反映させることが適正な法の見直しにつながる。