「外国人の政治活動は禁止」という言説をよく見かける。最近も沖縄出身のベストセラー作家が、日本政治に意見を述べた台湾出身作家をツイッターで批判したことが話題になった。本当に禁止なのか。本紙がファクトチェックすると禁止は一部だけで、言説は「不正確」だった。(編集委員・阿部岳

SNSなどでは「外国人の政治活動は禁止」という投稿がよく見られる

 7月に芥川賞を受賞した台湾出身の李琴峰(り・こと・み)さんは今月、日本政治についてこんなツイートをした。「現状に不満を覚える人は、まず思い切り野党に任せてみてはどうか。任せてみて、だめなら批判してまた交代すればいい。それが民主主義国家だ」

 これに対し、南城市生まれの作家、知念実希人(みきと)さんが発言した。「なんで外国籍の作家さんがここまで露骨に日本で政治活動しているのか、私には意味が分からない」
李さんの抗議を受け、知念さんはすぐ「思い込みで発言してしまいました」「謝罪し、撤回いたします」と表明。関連ツイートも削除した。李さんもこれを受け入れ、「解決済み」としている。

最高裁「基本的人権の保障は外国人にも等しく及ぶ」

 この一件は当事者間で落着したものの、外国人の政治参加を「内政干渉だ」「口を出すな」などと批判する言説は後を絶たない。事実はどうなのか。

 有名な「マクリーン事件」の判決がある。米国人のマクリーンさんが来日中にベトナム反戦運動の集会やデモに参加し、日本政府に在留の延長を拒否されたため提訴した。最高裁大法廷は1978年、こう判示した。

 「憲法の基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としているものを除き、外国人にも等しく及ぶ」。政治活動の自由もこの中に含まれる。一方で、活動を理由に在留延長を不許可にしたのは違法でないとした。

 

 法律ではっきり禁止されているのは外国人の政治献金(政治資金規正法)など一部にとどまる。「外国人の政治活動は禁止」という言説は一部の禁止を全面禁止かのように広げており、不正確だ。

 冒頭の知念さんはこの点をすぐに把握し、ツイートを撤回した。ベストセラー作家で医師の知念さんが信じてしまうほど耳になじみやすい誤情報なのかもしれない。
誤情報の拡散を防ぐ方法を一緒に考えたい、と本紙は取材を依頼した。知念さんは「専門家ではなく、知識不足なので」と辞退した。

【参照】

最高裁判所判例集(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53255

法令検索、政治資金規正法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000194

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この記事は沖縄タイムス社とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。沖縄タイムス社がNPO「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のガイドラインを参照してファクトチェックしています。