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少年の監禁事件で旭琉會の本部事務所を家宅捜索し、関係資料を押収する捜査員=9月29日、北中城村

薬物 未成年者摘発2倍

少年の監禁事件で旭琉會の本部事務所を家宅捜索し、関係資料を押収する捜査員=9月29日、北中城村 薬物 未成年者摘発2倍

 違法薬物を密売していた当時16歳の少年を車内に監禁したとして、沖縄県警は9月28日までに、指定暴力団旭琉會功揚一家総長ら暴力団関係者5人を逮捕した。「お前の親分は誰か」「知らない時点で終わりだ」と少年を脅したとされる手口は、近年みられる「売人たたき」と呼ばれるもの。流通ルートをほぼ独占し、代表的な“シノギ(資金調達の活動)”とされた暴力団の違法薬物の密売行為は、匿名性の高いソーシャルネットワークサービス(SNS)の普及によって一般個人にまで広がりつつある。(社会部・矢野悠希)

■SNSで飛び交う隠語

 違法薬物は今や、暴力団関係者を直接介さなくても簡単に手に入るようになった。沖縄県内では若年層を中心に広がり、SNS上には匿名アカウントで「野菜」「手押し」などの隠語が飛び交い、個人間の取引が行われている。

 これまで流通・販売を独占できる立場にあった暴力団からすれば、主要な資金源を奪われることとなり、不満を募らせるのは必至だ。かつては「密売を許可する代わりに、みかじめ料を支払わせるのが彼らのおきて」(県警幹部)だったが、SNSの普及で匿名化が進み、誰が売買しているのか特定が難しくなった。

 そのため、暴力団員らがSNSで客を装って反社会的勢力に属さない一般の薬物売人に近づき、金品を脅し取る「売人たたき」が近年増えているという。

 今回の事件もその一つ。2月に本島南部の路上で、覚醒剤大麻を密売していた少年をSNSで客を装って呼び出し、車内に押し込んで約45分間監禁し脅した揚げ句、少年が口を割らなかったため那覇署へ身柄を渡した。

 少年は覚醒剤取締法違反容疑などで逮捕されたが、一方で、暴力団から脅されていた事実も判明した。

■実際はさらに多い

 県警組織犯罪対策課によると、同様の被害を受けた一般の薬物売人は、違法行為がばれるのを恐れて警察に相談しないことも多く、実際はさらに多いとみられる。

 今年1~8月末時点で、覚醒剤や大麻取締法違反などの薬物事犯で摘発されたのは153人(前年同期比34人増)。10代の増加が顕著で、多くが暴力団やその関係者を介さず違法薬物を手にしている実態がある。

 暴力団関係者が、16歳少年の薬物入手ルートを強引に聞き出すため脅した今回の事件は、裏社会ビジネスの変化の一端を浮かび上がらせた。ある捜査関係者は「暴力団対策法(暴対法)や厳しい市民の監視の目で、かつてほどヤクザはもうからなくなった。みんな自分のシノギを守ろうと必死だ」と話した。