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高校進学せず渡米し世界王者に 中谷選手、14歳の原点 修学旅行先の沖縄で感銘を受けた場所

2021年10月5日 10:00

 世界ボクシング機構(WBO)フライ級王者の中谷潤人さん(23)=相模原市在住=が4日、沖縄県読谷村波平のチビチリガマを9年ぶりに訪れた。中学3年の修学旅行で来県した際、「命どぅ宝」という言葉に感銘を受けた場所。沖縄戦で起きた「集団自決(強制集団死)」に心を痛め、生きたくても生きられなかった犠牲者に思いをはせた。好きなボクシングができる幸せをかみしめ、世界を目指した14歳の原点を思い返した。(運動部・溝井洋輔)

9年ぶりに再会した地域ガイド「風の会」の比嘉涼子さん(左)の案内で沖縄戦を追体験する中谷潤人さん=4日、読谷村波平のチビチリガマ

WBOフライ級王座決定戦の1回、ジーメル・マグラモ(左)を攻める中谷潤人さん=2020年11月、東京・後楽園ホール(代表撮影)

9年ぶりに再会した地域ガイド「風の会」の比嘉涼子さん(左)の案内で沖縄戦を追体験する中谷潤人さん=4日、読谷村波平のチビチリガマ WBOフライ級王座決定戦の1回、ジーメル・マグラモ(左)を攻める中谷潤人さん=2020年11月、東京・後楽園ホール(代表撮影)

■熱い思い手紙に

 三重県の東員第二中3年生だった中谷さんに講話したのは、読谷村の地域ガイド「風の会」の比嘉涼子さん(64)ら。修学旅行後に書いた手紙に「戦争で亡くなった人々の可能性も背負ってぼくが世界チャンピオンになって沖縄に少しでも力になっていくために努力して頑張りたい」と、熱い思いをつづっていた。

 卒業すると、高校進学を選ばず単身渡米。厳しい王者への道を突き進んだ。修学旅行の頃はその前夜。多感な14歳の研ぎ澄まされた感性が、大きな夢へと一歩を踏み出す状況と相まって中谷さんに大きな影響を与えた。

 プロとなってからも勝ち星を重ね、昨年11月に念願の王者をつかみ取った。コロナ禍で2度の延期を経て、今年9月には米国での初防衛戦を4回TKOで勝った。

■9年ぶりに来訪

 異色のキャリアと、左ストレートを武器にした22戦全勝(17TKO)の逸材は、ボクシング界で大きな注目を集める。

 この間、比嘉さんは激励の電話やショートメールをし、中谷さんも感謝を伝えるなど交流を続けてきた。

 中谷さんは世界王者になったことを報告するため、沖縄を訪れた。チャンピオンベルトを持参し、1泊2日の日程で父・澄人さん(45)と来県。比嘉さんやガイド仲間の案内で、シムクガマや村役場など原点である9年前のコースをたどった。

 チビチリガマでは階段を下りて壕の入り口が見えると、すぐに一礼。家族を手をかけるまでに追い込まれた凄惨(せいさん)な事実や、それ故に遺族が長い間、口にすることすらできなかったこと、現在の米軍基地の状況など、比嘉さんから当時と同じ講話を約1時間にわたって聞いた。

■芽生えた思い

 中谷さんは記憶をたどるようにじっと聞き入り、言葉一つ一つに何度もうなずいた。話の後には壕の入り口に丁寧に花を手向け、黙とうした。

 「感謝する気持ちを持たせてもらった地。一つの目標を達成して帰れたことが本当にうれしい」。9年前の思いは全く変わっていない。

 「今の自分があるのは先人の皆さんや、命の大切さを伝えていただいたおかげ。平和を創造する一人になれるようさらに活躍しないといけない思いが芽生えた」と語った。

 比嘉さんは「ここで誓った世界王者の夢を果たし、立派な青年となって再びガマの前に立ったことがすごい。沖縄で羽を休めて、また世界へと羽ばたいてほしい」と激励した。

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