西銘恒三郎沖縄担当相が記者会見で、名護市辺野古の新基地建設を巡り、本島南部からの土砂採取計画を「一般論、常識としてどうかと思う」と疑問視した。

 沖縄戦の激戦地だった糸満市などからは、今も戦没者の遺骨が見つかる。県民投票で否定された基地建設のために使うのは「戦没者を2度殺すような、人道に反する行為」との批判が根強い。

 所管外とはいえ、県選出で南部地域の4区を地盤とする西銘氏が疑義を呈したのは当然だ。もう一歩踏み込んで政府に「南部土砂は使わない」と言わせるよう、閣内で働き掛けてほしい。

 遺骨混じりの土砂が基地の埋め立てに使われるかもしれない計画は、31日投開票の衆院選でも問われるべき重要な争点だ。沖縄1~4区の立候補予定者たちは南部土砂問題の見解を明確にし、選挙戦を通じて有権者に説明する必要がある。衆院選は比例代表を伴う選挙であり、政党も見解を示すべきだろう。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は自民党総裁選前、主要政党にこの問題を尋ねた。

 与党の自民は、岸田文雄首相をはじめ立候補した4氏全員が回答しなかった。公明は「必要があれば防衛省と協議したい」とした。

 「到底許されるものではない」と批判した立憲民主と、共産、社民、れいわ新選組の4党は明確に反対。日本維新の会も「南部からの調達計画の見直し」を求めている。衆院選までに、全政党が見解をまとめてほしい。

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 最も問われるのは、政府の姿勢だ。

 南部の土砂問題が浮上したのは、防衛省が辺野古新基地建設で、採取候補地に糸満市などを加えたのがきっかけ。遺骨収集に責任を持つべき政府が、基地を造るための土砂を沖縄戦の激戦地から調達すること自体が、戦没者と遺族への敬意を欠いている。

 菅義偉前首相は「採石業者においてご遺骨に配慮した上で、土砂の採取が行える」との認識を示したが、専門家は疑問視している。具志堅氏は「知識のない人が目視で探し出すのは、技術的にも物理的にも無理」と指摘した。

 沖縄戦の戦没者の遺骨を含む土砂を埋め立てに使わない要望は、沖縄県議会が、新基地建設を容認する会派も含めて全会一致で可決している。

 岸田首相は沖縄戦について、どのような見解を持っているのか。ぜひ自身の言葉で語ってもらいたい。

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 土砂を基地建設に使う反発は、県外でも広がっている。

 奈良県議会は、戦没者の遺骨などを含む地域の土砂を、基地建設の埋め立てなどに使用しないよう求める意見書を全会一致で可決した。

 政令指定都市の大阪市をはじめ、本土の市町村でも可決が相次いでいる。

 糸満市の平和の礎には県出身の犠牲者14万9584人だけでなく、本土の全46都道府県の出身者7万7458人も刻まれている。沖縄戦の犠牲と無縁な地域は存在しない。戦没者の尊厳を守ることは、全国に共通する課題なのだ。