沖縄県沖縄市のコザの街で愛され続けて50年以上。沖縄市のゲート通りの横道にあった食堂「定食丸仲」がこのほど、ひっそりとその歴史に幕を閉じた。お店のシャッターには、常連客から「ありがとう」「お疲れさまでした」「復活して!」など、感謝の声や閉店を惜しむ寄せ書きが今も続いている。(中部報道部・屋宜菜々子)

「定食丸仲」への思いをつづる常連客=4日、沖縄市中央

閉店した「定食丸仲」のシャッターに張られている常連客からの寄せ書き=9月29日、沖縄市

50年以上の歴史に幕を閉じた「定食丸仲」。シャッターに張られた常連客からの寄せ書きは1枚に収まらず、2枚目の寄せ書き用の紙が張られている=4日、沖縄市中央

「定食丸仲」の人気メニューだったとんかつ定食B、通称「かつB」=2020年9月(読者提供)

「定食丸仲」への思いをつづる常連客=4日、沖縄市中央 閉店した「定食丸仲」のシャッターに張られている常連客からの寄せ書き=9月29日、沖縄市 50年以上の歴史に幕を閉じた「定食丸仲」。シャッターに張られた常連客からの寄せ書きは1枚に収まらず、2枚目の寄せ書き用の紙が張られている=4日、沖縄市中央 「定食丸仲」の人気メニューだったとんかつ定食B、通称「かつB」=2020年9月(読者提供)

 嘉手納基地内のレストランで働いていた仲宗根文男さん(85)と勝子さん(82)夫妻が50年以上前に創業した定食屋。人気メニューは、豚肉をたたいて薄く延ばして揚げたカリカリのとんかつ定食B(700円)。常連客から「かつB」と呼ばれ、親しまれた。

 だが高齢やコロナ禍で営業を続けることができなくなったとして7月下旬、誰にも告げずに閉店。店のシャッターには、お客さんへの感謝の気持ちや、閉店することを決めたいきさつなどをつづった店主のあいさつ文が張られた。

 するとその横に「丸仲食堂ありがとう!」と書かれた紙が張り出された。食堂のファンが張ったと思われるその紙には、その後も「コロナになって入院中に丸仲がなくなっていた!でーじ(とても)ショック」「夢にまで出てくるかつB、私たちのソウルフード」など、次々とメッセージが寄せられた。

 閉店を惜しむ常連客らの寄せ書きは9月下旬を過ぎても終わらず、張り紙にコメントを書く余白がなくなると、その下にもう1枚、もっと大きな紙が追加された。

 人々の思いがこもった寄せ書きに、勝子さんは「本当にありがたいお言葉。お客さまには感謝しかないです」と感慨深げに振り返る。

 10月4日、食堂の前を通り掛かり、閉店を知った松井綺香(あやか)さん(28)は「えー、さみしい」と驚いた。「おいしくて、昔ながらの内装で歴史が刻まれた店だった」と話し、3年前から2~3カ月に1回程度通っていたという店への感謝を張り紙につづった。

 「かつBは、もはや食べ物ではなくコザの一部だった」と会員制交流サイト(SNS)に投稿した安村正子(しょうこ)さん(56)は、生まれも育ちもゲート通り。幼い頃から定食丸仲に家族と来店していたという。「コザの人々は誰もが、店主とすれ違うと声を掛け、買い出しに急ぐおじさんは片手を上げて応えていた」と振り返り「大切なものはなくしてはいけない。『かつB』の思い出を抱えて生きていきます」。

 定食丸仲は、コザの歴史の一部として刻まれていく。