地球温暖化など気候変動予測に関する研究に貢献した真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員(90)が、今年のノーベル物理学賞に決まった。受賞を喜ぶとともに栄誉をたたえたい。

 コンピューターを使って気温の変化などを予測する「気候モデル」を世界で初めて考案するなど、地球温暖化に関する先駆的な研究が高く評価された。

 日本人の物理学賞受賞は12人目。地球科学の研究でノーベル賞を受賞するのはまれだ。深刻化する温暖化対策を大きく加速させる契機としたい。

 真鍋さんは1950年代から、米国を拠点に気候に関する研究に従事。60年代には、CO2が増えると地球の気候がどう変化し、気温が上昇するのかを予測するモデルを開発し分析を重ねた。大気中のCO2濃度が2倍になると、気温が2度以上上昇するという結果を得た。

 その後、大気の流れと海洋の循環を組み合わせた長期的な気候変化をシミュレーションする手法も開発した。

 今や世界の差し迫った課題である地球温暖化に関する研究に半世紀以上も前から取り組んできた。

 CO2の増減が気候システムに与える影響や将来予測などの研究は、現在のCO2排出削減策など世界が取り組むべき方向性を導いた。

 人間の活動が温暖化に関係していることを証明し気候危機を予測したのは、日本を含む国際社会への警鐘でもあった。脱炭素社会に向けた認識をあらためて共有することが必要だろう。

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 真鍋さんは、研究を続けた原動力を「好奇心」と語る。

 研究の場を米国に置いたことについて「好きな研究が自由にできた」と言い、環境が充実していたことなども理由に挙げた。

 これまでも多くの日本人研究者が渡米するなど「頭脳流出」が指摘されてきた。今もより良い研究環境を求めて海外に出る若手研究者もいる。

 真鍋さんは「最近の日本の研究は、以前に比べて好奇心を持って研究することが少なくなっているように思う」との懸念も口にした。

 若手が好奇心を維持できる研究の環境整備を急ぐべきだ。

 今月末から国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれる。豪雨、干ばつ、洪水など多発する災害を食い止めるために日本がいかにリーダーシップを発揮できるかも問われる。

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 「タイムリーな賞だと思う」。真鍋さんは受賞会見でこう語った。

 気候変動の問題がより深刻化する中で、長年の研究が果たした意義を述べる一方、「今起きている気候変動をどうやって軽減させるかを考える必要がある」とも話し、危機感も表した。

 日本は2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを掲げる。企業や自治体などでも連動し取り組みが出ているが、消費者一人一人の生活様式や企業活動などの見直しも必要になる。真鍋さんの警告を重く受け止めたい。