衆院選を意識した、聞こえの良い言葉が並んだが、具体策に乏しかった。

 岸田文雄首相が国会で、就任後初の所信表明演説を行った。

 演説冒頭で「万全を期す」と語ったのは、最優先課題とする新型コロナウイルス対応だ。

 司令塔機能の強化、人流抑制や医療資源確保のために法を改正し、危機管理を抜本的に強化するという。

 しかし、都市封鎖(ロックダウン)の権限まで踏み込むものなのか、言及はなかった。

 非正規、子育て世帯への給付金支援を行うとしたが、詳細は示さなかった。選挙目当てのばらまきではないか、という疑念も生じる。

 経済政策では、小泉政権以降続いた新自由主義政策が、富める者と富まざる者の深刻な分断を生んだとして、「成長と分配の好循環」をつくり、中間層を拡大して、新しい社会を創り上げると訴えた。

 賃上げを行う企業への税制支援や、株主だけでなく従業員、取引先も恩恵を受けられる「三方良し」の経営を可能にする環境整備などで、働く人への分配機能を強化するという。

 意気込みは買うが、問題は実現できるかどうかだ。

 財源確保や社会保障制度の立て直しを含め、具体的な方法を示すべきだった。

 月末に迫る衆院選の判断材料になる大事な所信表明だったが、総花的な印象は否めない。

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 沖縄には、外交・安全保障政策の中で言及している。

 「丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組む」とし、前政権同様、「辺野古沖への移設工事を進める」と明言した。

 県内移設では、沖縄の負担軽減は実現しない。

 2019年の県民投票では、県民の7割超が辺野古移設に反対し、民意はすでに示されている。辺野古移設推進では「信頼関係を築く」ことにはならない。

 来年は復帰から50年になるが、「世界一危険」といわれる普天間飛行場の返還は、日米合意から25年が経過した今も、実現していない。

 「沖縄に寄り添う」と言いながら、新基地建設を強行に進めてきたのが「安倍・菅政権」だった。

 岸田首相が本当に沖縄と信頼関係を築きたいなら、そのための道筋をしっかりと示すべきだ。

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 超短期決戦となる衆院選は31日の投開票へ向け、動きがいよいよ本格化する。

 岸田首相は、所信表明で説明不足だった政策実現のための「how」を、代表質問や野党が要求している予算委員会などでしっかり説明するべきだ。

 コロナとの闘い、その後の立て直しは容易ではないはずだ。首相が言う、新しい時代を切り開く「ワンチーム」を創るためには「丁寧な対話」「丁寧な説明」を身をもって実行することが求められる。 過去の政権で失われた県民、国民の信頼を実行力で取り戻してもらいたい。