新首相も、安倍晋三元首相や菅義偉前首相同様の「説明しない政治」を繰り返すのだろうか。

 岸田文雄首相の所信表明に対する各党の代表質問が国会で続いている。

 衆院で岸田首相は、森友学園を巡る公文書改ざん問題で再調査を迫った立憲民主の辻元清美副代表に対し「国会などで説明を行ってきた」とその必要性を否定した。現金授受問題を抱える甘利明自民党幹事長の説明責任については「政治家自身が判断すべきだ」とかわした。

 参院では、日本学術会議の会員候補6人を菅内閣が任命拒否した理由をただされた。岸田首相は「人事に関することなので答えは控える」と菅前首相と同様の答弁を行っている。所信表明で「政治とカネ」問題に触れなかった点を問われ「直接言及してはいないが『信頼と共感を得られる政治が必要だ』と述べた」と釈明した。

 新型コロナウイルス対策に関する説明不足で行き詰まった菅政権をいわば反面教師にし、所信表明に「国民との丁寧な対話」を盛り込むなど、岸田首相は「安倍・菅政治」との路線の違いを印象付けようとしてきた。

 だが、その新型コロナ対策についても「全体像を早急に示す」と述べるにとどまっている。

 安倍・菅政治を踏襲するかのような一連の答弁に、国民は「丁寧さ」を感じられるだろうか。これでは岸田首相が総裁選時に掲げた政治への信頼回復には遠い。

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 総裁選で訴えた独自政策に関する発言も後退した。

 総裁選や首相就任会見で意欲を示していた、主に富裕層が対象となる金融所得への課税強化方針に関し、首相は「優先順位が重要。賃上げに向けた税制、下請け企業対策の強化などから始める」と答弁、見送る意向を示した。株価への影響を考慮したとみられるが、総裁選時の「公約」は腰砕けとなった。

 同様に、コロナ下における所得格差是正のためとして「分配」を重視する政策もトーンダウンした。国会答弁では「令和版所得倍増計画」にも言及しなかった。

 当初は「成長と分配の好循環」を掲げた首相は「成長なくして分配できるとは思わない」と成長戦略に軸足を移す姿勢を鮮明にした。就任からわずか9日。見えてきたのは政策の「見送り」「棚上げ」「ぶれ」である。早くも独自色が薄れつつある。

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 姿勢を後退させた首相に対し、立民の枝野幸男代表は「分配なくして成長なし」と訴え分配重視を鮮明にした。その上で所得税や消費税の減税などを訴えた。

 首相や枝野氏の政策は財源の多くが国債頼みで将来へのつけ回しになりかねず、財源論や今後のあるべき税制について説明が求められる。

 衆院は14日に解散する予定で、衆院選が論戦の舞台となる。31日投開票予定の限られた時間の中で、首相はいかに丁寧な説明ができるか。与野党はばらまきでない分配政策を描けるのか。国民は注視している。