[報道の舞台裏 秋の新聞週間](1)沖縄総合事務局長の出張問題

当時沖縄総合事務局長だった吉住啓作氏の公務出張を記録した「旅行命令簿」

 7月2~7日、当時沖縄総合事務局長だった吉住啓作氏の公務出張問題を次々報じた。緊急事態宣言中にもかかわらず観光ポータルサイト製作目的で来島自粛を求める離島に出向いた、サイトに載せる写真撮影で県内4千カ所余りの名所旧跡を訪ね、通常業務に穴があいた-などだ。

 端緒は先輩記者からの情報だった。「総合事務局長が出張と称して観光しているらしい」。この時点で入手した情報は、3カ月で2度も西表島の奥地を訪問していることと、南城市の久高島とコマカ島の視察予定がある、という程度。真偽を確かめるため、同僚記者を久高島に派遣した。

 久高島入りした吉住氏ら一行を追い掛けた結果、同僚は「まっとうな視察のように見えます」と報告してきた。コマカ島視察も当日キャンセルするなど段取りの悪さがうかがえたが、出張自体にどんな問題があるのかがつかめない。記事化は厳しいな、と感じた。

 念のため、吉住氏の出張記録に関する一式を情報公開請求した。すると開示された資料には前任の局長とは明らかに違う、同じ観光地を繰り返し訪ねるなど異様な出張スケジュールが記されていた。局関係者からの情報も加わり、問題が鮮明となった。

 問題点を整理し、吉住氏本人にインタビューを申し込んだ。出世の階段を駆け上がるキャリア官僚。質問に何と答えるのか、緊張して臨んだ。微笑をたたえ、落ち着き払い、釈明や否定を続ける吉住氏。終盤で同席の先輩記者が「はた目には遊んでいるように見える」とぶつけると「全くない。現場確認のためだ」と気色ばんだ。

 「現場主義」。吉住氏が出張の正当性を訴える根拠とした言葉だ。確かに組織のトップが精力的に地方を隅々まで巡る姿は、勤勉さを映しているようにも思える。しかし視察先とその内容は、局長の仕事と言えるのか。公務員倫理に詳しい識者に問い合わせ、妥当性について聞いた。

 掲載後、読者から普段暮らす中では知る由もない大事な報道だと、激励の手紙が届いた。

 報道から2週間後には河野太郎沖縄担当相が吉住氏に「不適切なところが否めない」と厳重注意した。

 今回、勇気ある職員の情報提供もあり本紙読者が知ることになった。新聞がそんな志ある人々の信頼に足る公器で有り続けられるような、記者の仕事をしていきたい。(社会部・城間陽介)

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 沖縄総合事務局長の出張問題、新型コロナ、東京五輪、ヤングケアラー、沖縄戦。本紙が報じたニュースの裏で各記者はどのように取材し、何を考えながら記事を書いたのか。読者の信頼に応えるには、取材過程も重要だ。掲載された記事の舞台裏を執筆した記者が振り返る。

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