犯罪被害者の支援などに取り組んでいる琉球大学人文社会学部教授で沖縄県公認心理師協会の前副会長、伊藤義徳氏による「ゲートキーパー養成講座」が15日、オンラインであった。沖縄県の宜野湾市男女共同参画支援センターふくふくによる企画。

オンラインで講演する伊藤義徳氏

 ゲートキーパーは、自殺(自死)の危険を示すサインに気付いて適切な対応ができる「命の門番」を指す。伊藤氏は「身近な人が自殺を食い止める力。『何かあれば話してくれるだろう』と待っているだけでは遅い」とし、ゲートキーパーのやるべき「3KTM(気付き、声掛け、傾聴、専門家へのつなぎ、見守り)」を説明した。

 その上で、「相談者へのアドバイスは逆効果」と指摘。「たとえ正しい内容でも、アドバイスは理想の押し付け。人の苦悩は理想と現実の差から生まれる」と警鐘を鳴らした。大切なのは、相談者にとっての「すごい人」ではなく「好きな人」になれるように話を聴くことだと説いた。

 具体的な方法として、「声掛け」の段階では「つらそうだけどどうしたの?」「眠れてる?」など、根掘り葉掘り聞き出そうとせずに心配している気持ちを伝えるという。

 「傾聴」では、相談者が事実誤認をしていたとしても否定せずに「あなたはそう受け取ったんだね」と応じる。「○○とお考えなんですね」「○○というお気持ちなんですね」などと相談者が言った言葉を繰り返すのがこつで、言い換えは不要。伊藤氏は「安易に励ますことなく、声のトーンや表情を変えることで心の温度を合わせて」と勧めた。実際、優れたカウンセラーが面接中に話す言葉の8割は、相談者の言葉の繰り返しで成り立っているという。

 自殺を乗り越えた人を対象に厚労省が実施した意識調査では「家族や友人、職場の人に悩みを聞いてもらった」が32・1%。「医師やカウンセラーなど心の健康に関する専門家に聞いてもらった」は8・8%にすぎない。

 15~34歳で事故よりも自殺による死亡率が高いのは先進7カ国の中で日本のみ。日本財団の2016年の調査では、4人に1人が「本気で自殺したいと考えたことがある」と回答しており、伊藤氏は「『誰かが助けてくれる』という望みをいかに持ってもらえるかが鍵になる」と訴えた。