[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](317)

子どもの虫歯(いらすとや)

 皆さまは、ランパントカリエスという言葉を耳にしたことはありますか? う触多発症ともいい、お子さんの多数の歯に虫歯が発生している状態です。歯磨きが行われていない、子どもが痛いと泣き叫んでも放置して歯科医院にも連れて行かないという、ネグレクト(育児放棄)が疑われる場合もあります。保育園の歯科健診でもたまに見られることがあります。

 以前、お子さんたちに指導しても次から次に虫歯をつくってきました。兄弟3人が同じ状態です。余りのひどさに、ついにドクターが怒りました。その時にお母様が重い口を開いたのです。「主人が子どもが夜泣きするととても怒るんです。だから、子どもの好きなお菓子をいつも用意していて、子どもが泣いたら夜中でも口の中に入れているのです。それが駄目だとは分かっているのですが」。この子どもたちのランパントカリエスは、そんなところに原因があったんです。虫歯になると分かっていても、苦肉の策でそうする以外になすすべが見つからなかったという母親を誰が責められましょう。では、私たちに何ができるか。「そういう事情だったんですか。それなら、毎月連れてきてください。できることを一緒にやりましょう」と声を掛けました。

 久しぶりの定期健診で急に虫歯が増えているお子さんがいました。口腔(こうくう)内の清掃状況も悪く、一緒に来たおばあちゃんに「何か環境が変わりましたか」と尋ねると、ご両親が離婚したとのこと。母親の精神状態は子供の口腔内に顕著に現れることを痛感しました。

 世のお父様たちにお願いします。理想的には、時々は母親に代わってお子さんの寝る前の仕上げ磨きをしてほしいのですが、それがどうしても物理的に無理なら、奥さまに「いつも家族のために頑張ってくれてありがとう」という感謝の一言を掛けてください。その言葉で、母親は心の安定感が得られ、また子供のためにも頑張れるのです。子供の口腔内にも平和が訪れます。(長堂芳子 長堂歯科医院=那覇市