帝王切開手術をしたかのように装い診療報酬をだまし取ったとして沖縄県警に20日、詐欺容疑で逮捕された容疑者(52)が院長を務める沖縄市の「あいレディースクリニック」では長年、不正が横行していたと複数の関係者が口をそろえる。病院への不信感などから、辞めた職員は開業から約9年間で100人以上に上るという。元職員の1人は「(容疑者は)患者を利用し、医療費を取れるだけ取るという姿勢。不誠実な対応や入院費などの高額請求で転院する患者も多く、本当に申し訳なく思っていた」と吐露する。

パトカー(資料写真)

■カルテに印を付けて

 「ここのほとんどが全員ハイリスク妊娠のようだった。(容疑者から)健康なのに『妊娠高血圧症候群』と病名を入れてカルテを書き換えろ、とか普通にありました」。元看護スタッフが打ち明ける。「ハイリスク妊娠」と診断すれば、高額な点滴薬「マグセント」を使ったことにして診療報酬を架空請求できるからだという。「うそだと分かっていても、医師が言うのでみんな従うしかなかった」(同)。

 現場の看護師たちは、特定の病名に使う薬剤を間違って健康な妊婦に投与しないよう、カルテに「★」「●」など印を付けて“事実”と“虚偽”を区別し、医療ミスに細心の注意を払ってきたという。

 別の元職員は「カルテの印は、院長の不正から自分たちを守るために看護部で決めた」と明かす。診療報酬明細書(レセプト)の作成係に渡される虚偽のカルテとは別に、看護部では「紙カルテ」と呼ばれる正確な事実を記したもう一つの患者記録を用意し、ミスが起きないよう防衛策を講じていた。

 虚偽のレセプト作成に加担させられてきた元職員によると、診療報酬請求は月締めで、毎月2千万~3千万円に上ったという。「多いときは、不正の報酬点数で毎月50万点(500万円)、平均で20万点(200万円)はあった」といい「不正が常態化していて、何が事実かも分からなくなるぐらい、現場は混乱していた」と振り返った。

■院長は「ミス」と主張

 容疑者は逮捕前、本紙の取材に対し、診療報酬明細書(レセプト)の意図的な改ざんや架空請求を否定。事実と違うケースがあれば「スタッフや看護師のミスだった」との認識を示していた。主なやりとりは次の通り。

 -緊急帝王切開手術の実態がないのに、うその内容で診療報酬を請求したか。

 「医事課のミスもあるかもしれない。今いるメンバーに確認したが分からないと言っていた。ただし、医事課は少ない時間で外来対応しながらレセプトのチェックをするので、ミスは多いと思う。もしあれば訂正したい」

 -そのような事実はない、ということでいいか。

 「まあ、医事課に聞いたところ、そういう事実はないということ。そのようなことはしていません」

 -使っていない薬剤をレセプトに記載して、診療報酬を請求したか。

 「使っていない薬剤をレセプトに記載すれば、患者から『使っていませんよ』と当然言われるので。そういう事実はないです」「ただし、看護師も忙しいので予定していない薬を使ったけど記録ミスとか、転記漏れ、というのはあると思う」

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